最新の研究成果

双子への児童虐待は、母親の健康状態の悪化が強く関連 -3歳児健診などのデータから分析-

2025年1月10日

  • 看護学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇双子への虐待発生率は単胎児よりも約3倍高く、86%は母親が虐待者であることを確認。
◇妊娠期からの育児支援により、双子に対する児童虐待の発生が低減する可能性。

概要

日本では、出生率が年々低下しているにもかかわらず、児童虐待に関する相談件数は増加し続けています。被虐待児の約半数は就学前から虐待を受けていることが報告されており、特に多胎児は単胎児と比べて、育児における母親の身体的、精神的負担が大きいため、虐待のリスクが高いと言われています。しかし、多胎児への虐待の発生率や発生要因について、地域に在住するすべての子どもを対象とした検証は、これまで十分に行われていませんでした。
大阪公立大学大学院看護学研究科の横山 美江教授らの研究グループは、3歳児健康診査のデータと、自治体の保健師が支援を行った被虐待児や虐待を受けている疑いのある児童に関する記録をもとに、双子への虐待の発生率とその関連要因を分析。双子への虐待の発生率は、単胎児への虐待の発生率よりも約3倍高いことが明らかになりました。また、単胎児、双子ともに母親が虐待者となるケースが最も多く、虐待が認められた家庭の多くで、母親の心身の健康状態が悪化していることが分かりました。
本研究結果により、虐待発生の背景には、妊娠中からの心身の不調が改善しないまま育児が始まり、多胎育児で生じる過度な負担によって母親の健康状態が極度に悪化する可能性のある育児環境があることが明らかになりました。母親や養育者に対する妊娠中からの育児情報の提供や、産後の育児支援による育児負担の低減が重要であることが示されました。
本研究成果は、2024年12月6日に、国際学術誌「Twin Research and Human Genetics」にオンライン掲載されました。


双子の遺伝子情報の特性を活かした「双生児研究」に20年以上携わっています。そのなかで、双子をもつ母親の「死ぬような思いをして双子を育ててきた」、「マンションのベランダから飛び降りようと思うことがよくある」等の深刻な声を耳にし、強い衝撃を覚えました。研究者として、多胎児家庭が置かれている状況を社会に提示する必要性を感じ、研究を進めています。

yokoyama

横山 美江教授

掲載誌情報

【発表雑誌】Twin Research and Human Genetics
【論  文 名】Risk factor for child maltreatment at 3 years of age in Japanese multiples and singletons: a population-based study
【著  者】Yoshie Yokoyama, Yasue Ogata, Karri Silventoinen
【掲載URL】https://doi.org/10.1017/thg.2024.42

資金情報

本研究は、科学研究費基盤研究費B(23K20354)の助成を受けて実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院学看護学研究科
教授 横山 美江(よこやま よしえ)
TEL:06-6645-3536
E-mail:yyokoyama[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:柴田
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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