最新の研究成果

多文化社会を読み解く鍵は寛容さではなく不信感だった -約200年前の文書から見たオスマン帝国の新事実-

2025年1月17日

  • 文学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇聖職者を利用した非ムスリムの統治制度の成り立ちを、オスマン帝国の文書史料から調査。
◇非ムスリムへの不信感の高まりと統制の強化が、「ミッレト制」に繋がったことが明らかに。 

概要

1300年頃〜1922年にかけて存続したオスマン帝国には、支配者層のイスラーム教徒だけでなく、ギリシア人やアルメニア人、カトリック、ユダヤ教徒などの非ムスリムも数多く共存していました。非ムスリムの統治には、各宗派集団の聖職者を利用する仕組みが用いられており、これまでオスマン帝国の寛容な政策の象徴と見なされてきました。しかし、こうした仕組みがどのように発展したのかは明らかになっておらず、オスマン帝国史研究の謎の一つでした。

大阪公立大学大学院文学研究科の上野 雅由樹准教授は、オスマン帝国でギリシア独立戦争が起こった1820年代に着目し、文書史料を調査。後の研究者が「ミッレト制」と呼ぶことになる、聖職者を利用した統治制度は、ギリシア人の反乱によって帝国上層部に広まった非ムスリムへの不信感と、彼らに対する統制強化の産物であったことが明らかになりました。

本研究成果は、2025年1月10日に国際学術誌「Comparative Studies in Society and History」にオンライン掲載されました。

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イスタンブルのガラタ地区にあるアルメニア教会

上野 雅由樹准教授のコメント

今回の結論につながる調査は、前に書いた論文でよく分からなかったことをもう少し調べてみようと思って気楽に始めたものでした。その結果として、これまでさまざまな研究者が別々に扱ってきたいくつかの事象の間に、関連性があったという予想外の発見をすることができ、それを自分なりにまとめることができたことが嬉しかったです。

掲載誌情報

【発表雑誌】Comparative Studies in Society and History
【論文名】Purifying Istanbul: The Greek Revolution, Population Surveillance, and Non-Muslim Religious Authorities in the Early Nineteenth-century Ottoman Empire
【著者】Masayuki Ueno
【掲載URL】https://doi.org/10.1017/S0010417524000343

資金情報

本研究は、JSPS科研費(20KK0266、23K00870)の助成を受け実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院文学研究科
准教授 上野 雅由樹(うえの まさゆき)
TEL:06-6605-2397
E-mail:m_ueno-lit[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06- 6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。