最新の研究成果

-熟練船長の運転技術をAIが学習- 船の安全な自動着岸をサポートするシステムを開発

2025年1月29日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

概要

「自動運転」と聞くと、多くの方が自動車を思い浮かべるかもしれませんが、国内で物資や人を運搬する船でも、船長の高齢化や船員不足が深刻な課題となっており、その解消に向けて自動運転技術の研究・開発が行われています。船の自動運転にはさまざまな課題があり、その一つが岸壁などへの船の着岸です。これまでの研究で、船をある1つの決まったルートに沿って自動着岸させる手法が開発されていますが、船が風や波など予測不可能な外部力を受けた際の軌道修正ができないことが課題でした。

大阪公立大学大学院工学研究科の檜垣 岳史助教、橋本 博公教授の研究グループは、船の着岸までの実際の運航データをAIに模倣学習させることで、安全な着岸が可能な運航ルートの分布を示すシステムを開発しました。また、福岡県新門司港に出入りする船長約150mのフェリーと自動車運搬船の、位置・針路・船速・行き先などを示す船舶自動識別システム(AIS)データを用いて、本システムの性能を検証。図の青色で示したエリアに船が到着すると、本システムが提案した安全に着岸可能な運航ルートに沿って自動着岸できることを確認しました。本システムは自動着岸だけでなく、操船者への操縦練習コンテンツとしての活用も期待されます。

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図 本研究で提案した着桟支援分布の例。
新門司港に着岸するカーフェリー「豊昇丸」のAISデータを用いて生成。

本研究成果は、2024年12月25日に国際学術誌「Ocean Engineering」のオンライン速報版に掲載されました。

日本の輸出入は99%以上が船を使用しており、私たちの生活には欠かせません。しかし、昨今は船員の高齢化や人手不足といった課題に直面し、自動運航船の実用化が求められています。今回提案した手法を搭載した船が世界中を旅することを目標に、今後も研究を進めていきたいと思います。

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檜垣 岳史助教

掲載誌情報

【発表雑誌】Ocean Engineering
【論文名】Docking assistance method for autonomous berthing by backward-time imitation learning and kernel density estimation based on AIS data
【著者】Takefumi Higaki, Hirotada Hashimoto
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.oceaneng.2024.120122

資金情報

本研究は、JSPS科研費(22J20009、22KJ2623、23H01627)および造船学術研究推進機構(REDAS)の支援を受けて実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
助教 檜垣 岳史(ひがき たけふみ)
TEL:072-252-6185
E-mail:higaki.marine[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06- 6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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