最新の研究成果
クローン病や潰瘍性大腸炎における治療薬の併用効果を保険診療データから検証
2025年1月30日
- 医学研究科
- プレスリリース
概要
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は根治的な治療法がなく、症状や炎症を緩和するための薬物治療が行われます。古くから治療に用いられている5-アミノサリチル酸(5-ASA)や、近年炎症性腸疾患への適用が承認されたウステキヌマブなど、症状の程度に応じてさまざまな薬が使用されており、ウステキヌマブと5-ASAを併用する治療例も多く見られます。しかし、近年の治療ガイドラインでは5-ASAの併用を推奨しておらず、2種類の薬を併用する効果は明らかになっていませんでした。
大阪公立大学大学院医学研究科消化器内科学の西田 裕講師、細見 周平准教授、藤原 靖弘教授らの研究グループは、クローン病患者1,971名、潰瘍性大腸炎患者1,284名の保険診療データから、ウステキヌマブと5-ASAの併用効果を分析。その結果、2つの薬を併用しても再燃率に大きな差はなく、治療効果にも影響がないことが分かりました(図)。本成果は、患者にとって副作用リスク等の少ない治療方針の決定に役立つと考えられます。
本研究成果は、2025年1月11日に国際学術誌「Inflammatory Bowel Diseases」のオンライン速報版に掲載されました。
図 ウステキヌマブ投与開始後におけるクローン病・潰瘍性大腸炎の累積再燃率
以前から日常臨床で、ウステキヌマブを使用する患者さんに5-アミノサリチル酸を併用する効果について疑問を持っていました。今回膨大なデータを解析して、その併用効果がほとんどないことを明らかにできました。この結果が治療方針の見直しや患者さんの負担軽減につながることを願っています。
西田 裕講師
掲載誌情報
【発表雑誌】Inflammatory Bowel Diseases
【論文名】Impact of 5-Aminosalicylic Acid on Ustekinumab in Inflammatory Bowel Disease: A Retrospective Medical Claims Analysis
【著者】Yu Nishida, Shuhei Hosomi, Koji Fujimoto, Yumie Kobayashi, Rieko Nakata, Hirotsugu Maruyama, Masaki Ominami, Yuji Nadatani, Shusei Fukunaga, Koji Otani, FumioTanaka, and Yasuhiro Fujiwara
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/ibd/izaf001
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
講師 西田 裕(にしだ ゆう)
TEL:06-6645-3811
E-mail:d21603q[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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