最新の研究成果

AIを活用して流体の動きを予測計算する新モデルを開発 -精度を落とさず計算時間の大幅短縮に成功-

2025年2月5日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

概要

海上発電などを効率的に行うためには、波や潮流など流体の動きをいち早く予測し、発電装置にどのような力が加わるかを計算する必要があります。流体の動きの計算には主に粒子法が用いられますが、人の手で一から計算すると膨大な時間がかかります。そこで近年は「代理モデル」と呼ばれる、AIに事前に計算前の流体の状態と計算後の流体の状態を学習させて、計算時間を短縮する手法の研究が進んでいます。このような計算手法は、映画などのグラフィックでも使用されていますが、これまでの研究ではAIによる計算結果の精度検証は十分ではありませんでした。

大阪公立大学大学院工学研究科の檜垣 岳史助教らの研究グループは、グラフニューラルネットワークと呼ばれる深層学習技術を用いて、新しい代理モデルを提案。代理モデルを使用せずに流体の動きを予測した場合と同程度の精度を維持しながら、計算にかかる時間を約45分から約3分まで大幅に短縮することができました(図1)。本モデルは、海洋発電設備や船舶などの設計時に必要な流体挙動計算の時間短縮や、海洋発電の効率最大化に向けた流体挙動のリアルタイム計算などへの応用が期待されます。

本研究成果は、2025年1月15日に国際学術誌「Applied Ocean Research」のオンライン速報版に掲載されました。

press_0205図1 粒子法と本研究の代理モデル(計算時間の刻み幅:0.0020秒)による流体シミュレーション例。
同程度の計算精度を維持したまま、計測時間を15分の1に短縮可能。

AIは、ある問題では素晴らしい成果を出せるものの、別の問題に適用するとたちまち性能が悪くなってしまう、ということがしばしば起こり得ます。本研究でも、提案手法の汎用性を証明するのに苦労しましたが、粘り強く研究を続けることで今回の成果を得ることができました。

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檜垣 岳史助教

掲載誌情報

【発表雑誌】Applied Ocean Research
【論文名】Step-by-step enhancement of a graph neural network-based surrogate model for Lagrangian fluid simulations with flexible time step sizes
【著者】Takefumi Higaki, Yuki Tanabe, Hirotada Hashimoto, Takahito Iida
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.apor.2025.104424

資金情報

本研究は、JSPS科研費(24K22934)の支援を受けて実施しました。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
助教 檜垣 岳史(ひがき たけふみ)
TEL:072-252-6185
E-mail:higaki.marine[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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