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最新の研究成果
バングラデシュの鶏肉における食中毒細菌 エシェリキア・アルバーティの汚染実態を調査
2025年2月7日
- 獣医学研究科
- プレスリリース
概要
エシェリキア・アルバーティ(Escherichia albertii)は、2003年に新種の食中毒細菌として報告されて以降、世界中で食中毒を引き起こしています。E. albertiiの中にはO157と同じ病原因子を持つものもあるため注意が必要ですが、感染源や感染経路にはまだ不明な点も多く残されています。汚染された鶏肉を加熱不十分なまま食べることで感染するという報告もありますが、開発途上国では鮮度を保つために、販売直前に鶏を加工処理する場合も多く、このような国々での鶏肉の汚染状況は明らかになっていませんでした。
大阪公立大学大学院獣医学研究科の日根野谷 淳准教授らとバングラデシュ農業大学のJayedul Hassan教授らの国際共同研究グループは、E. albertiiが最初に発見されたバングラデシュの鶏肉販売店17店から、切り分けた肉と内臓肉、鶏の総排泄腔、店員の手指への付着物、加工処理に使用するナイフ等の拭い液を採取し、E. albertiiの検出、分離、分離株の特徴を解析しました。その結果、71%の個体がE. albertiiを腸管内に保菌しており、可食部位(肉や内臓肉)の汚染率は64%と極めて高い数値であることが分かりました。また、加工処理時に腸管内のE. albertiiによって肉が汚染され、店員の手を介して汚染が拡がっていることも明らかになりました。さらに、94%の分離株が抗菌薬耐性を、そのうち50%は多剤耐性を示し、中にはヒトの感染症治療に用いる抗菌剤への耐性を示す菌株も見られました。モノの移動がグローバルに行われる現在、他国における感染症の制御には国境を越えた取り組みが重要です。今後は、ヒトへの感染実態や鶏への汚染経路を調べ、両者からの分離株の特徴を比較解析することで、バングラデシュにおけるE. albertiiの感染源や感染経路の解明を目指します。
本研究成果は、2025年1月22日に国際学術誌「International Journal of Food Microbiol」のオンライン速報版に掲載されました。
図 本研究で明らかになった、バングラデシュにおけるE. albertiiの感染経路
掲載誌情報
【発表雑誌】International Journal of Food Microbiol
【論文名】Occurrence and cross contamination of Escherichia albertii in retail chicken outlets in Bangladesh.
【著者】Jayedul Hassan, Kishor Sosmith Utsho, Susmita Karmakar, Md. Wohab Ali, Sharda Prasad Awasthi, Chiharu Uyama, Noritoshi Hatanaka, Shinji Yamasaki, Atsushi Hinenoya
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.ijfoodmicro.2025.111081
資金情報
本研究の一部は、JSPS科研費(20K06396、24K09249)および公益財団法人 大山健康財団 学術研究助成金(2021年度)の支援を受けて実施しました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院獣医学研究科
准教授 日根野谷 淳(ひねのや あつし)
TEL:072-463-5676
E-mail:hinenoya[at]omu.ac.jp
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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