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最新の研究成果
ネナシカズラが相手に触れた後、寄生を始めるメカニズムを発見
2025年2月12日
- 農学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇ネナシカズラは他の植物に巻きつき、吸器と呼ばれる器官を相手の組織の中に侵入させ、水分や養分を取って生育する。
◇巻きつく際の接触で起きる刺激を感知して吸器が発生する。
◇吸器の発生に遺伝子CcMCA1が関与していることを解明。
概要
つる性植物のネナシカズラは、他の植物の茎や葉などに巻きつき、吸器と呼ばれる器官を相手の組織の中に侵入させ、水分や養分を取って生育する寄生植物です。巻きつく際の接触で起きる刺激を感知して、細胞膜上にあるイオンチャネル※が働き、細胞内の反応を誘起することで吸器が発生することが知られています。ネナシカズラはイオンチャネルを多種類持っていますが、どれが吸器の発生につながるのかは分かっていませんでした。
大阪公立大学大学院農学研究科のPark Jihwan氏(研究当時、大学院生)、津島 綾子助教、青木 考教授らの研究グループは、ネナシカズラが持つ100個以上のイオンチャネル遺伝子の中から既知の情報をもとに遺伝子を選出。そして、Cuscuta campestris MID1-COMPLEMENTING ACTIVITY1 (CcMCA1)という遺伝子の発現を抑制した時に、寄生部位における1cmあたりの吸器数が減少することを見つけ出しました。本結果により、CcMCA1が機械的刺激を感知して吸器を発生させることに関与していることが分かりました。
本研究成果は、2025年1月17日に、国際学術誌「Plant and Cell Physiology」にオンライン掲載されました。
図 ネナシカズラ(左)の通常の寄生部位の吸器(中)とCcMCA1発現抑制個体の寄生部位の吸器(右)。CcMCA1を抑制すると吸器数が減る。
ネナシカズラにとって、寄生する相手を探り当てることは死活問題です。寄生を開始するには、いわゆる「触覚」を使っていることが分かっていましたが、それを担う遺伝子は不明でした。本研究で、その遺伝子CcMCA1を突き止め、相手に触れて開始される寄生器官「吸器」の形成に関係していることを明らかにしました。結果が出るまで時間がかかりましたが、この遺伝子を初めて特定できて大変嬉しいです。
Park Jihwan氏
掲載誌情報
【発表雑誌】Plant and Cell Physiology
【論 文 名】Involvement of MID1-COMPLEMENTING ACTIVITY 1 encoding a mechanosensitive ion channel in prehaustorium development of the stem parasitic plant Cuscuta campestris
【著 者】Jihwan Park, Kyo Morinaga, Yuma Houki, Ayako Tsushima, Koh Aoki
【掲載URL】https://doi.org/10.1093/pcp/pcaf009
資金情報
本研究の一部は、公益財団法人大隅基礎科学創成財団 第7期研究助成(一般)ならびにJSPS科研費(19H00944)の助成を受けて実施しました。
用語解説
※ イオンチャネル:細胞膜上にあるタンパク質で、細胞内外のイオンの透過を制御する。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院農学研究科
教授 青木 考(あおき こう)
TEL:072-252-6384
E-mail:kaoki[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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