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最新の研究成果
肝星細胞の形状変化に重要なタンパク質を特定 -肝線維化を抑制する標的因子となる可能性を示唆-
2025年2月20日
- 医学研究科
- プレスリリース
概要
肝星細胞は肝臓を構成する細胞の一つで、肝臓に障害が生じると活性化し、創傷治癒に必要なコラーゲン線維を生成します。一方で、慢性的な肝臓の炎症により肝星細胞の活性化状態が長引くと、コラーゲン線維の過剰な蓄積が生じ、肝線維化を引き起こします。肝線維化が進行すると肝硬変や肝がんの発症へ繋がるため、肝線維化治療のために肝星細胞の活性化を制御する治療薬の研究開発が進んでいます。
大阪公立大学大学院医学研究科機能細胞形態学の湯浅 秀人助教、池田 一雄教授らの研究グループは、肝星細胞が活性化の初期段階の形状変化に着目し、その分子メカニズムを解析しました。その結果、細胞の形状制御に関わるタンパク質Cdc42※の不活化が、肝星細胞の形状変化と活性化に重要な役割を果たすことを見出しました。また、細胞レベルの実験において扁平な形状をしていると思われていた活性化状態の肝星細胞が、実際の生体内では楕円のような形を示す中間型や多様な突起を伸ばす不定型など、扁平な形状以外にもさまざまな形状をしていることが明らかになりました。本成果は、Cdc42が肝線維化への新規治療薬の開発に向けて新たな標的となることを示唆しています。
本研究成果は、2025年1月27日に国際学術誌「American Journal of Physiology-Cell Physiology」のオンライン速報版に掲載されました。
掲載誌情報
【発表雑誌】American Journal of Physiology-Cell Physiology
【論文名】Cdc42 is crucial for the early regulation of hepatic stellate cell activation
【著者】Hideto Yuasa,* Tsutomu Matsubara, Hayato Urushima, Atsuko Daikoku, Hiroko Ikenaga, Chiho Kadono, Masahiko Kinoshita, Kenjiro Kimura, Takeaki Ishizawa, Keisuke Ohta, Norifumi Kawada, Kazuo Ikeda
【掲載URL】https://doi.org/10.1152/ajpcell.00987.2024
資金情報
本研究の一部は、日本学術振興会(JSPS)科研費(19K16479、JP21H02626)、大阪難病財団(26-2-49)および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(JP21fk0210050、JP22fk0210107)の助成を受けたものです。
用語解説
※ Cdc42(cell division cycle 42)…細胞の骨格であるアクチンの調整を介して細胞の形状を制御するタンパク質。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科
助教 湯浅 秀人(ゆあさ ひでと)
TEL:06-6645-3701
E-mail:yuasa.hideto[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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