
最新の研究成果
呼吸筋力の低下が慢性閉塞性肺疾患における症状の急激な悪化に影響を与えることを確認
2025年2月27日
- 医学研究科
- プレスリリース
概要
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコの煙などの有害物質を長期間吸入することで生じる疾患で、肺の生活習慣病ともいわれており、日本では死亡原因の9位、世界では3位となっています。COPD患者に見られる全身の骨格筋量や骨格筋力の低下は、生活の質(Quality of Life, QOL)の悪化だけでなく症状の急激な悪化(COPD増悪※)や死亡率とも関連します。なかでも、呼吸筋は骨格筋の一部であると同時に呼吸システムにも関与するため、呼吸筋力の評価はCOPDの病態把握に重要な指標であると考えられますが、COPDにおける呼吸筋の役割などその詳細は明らかになっていません。
大阪公立大学大学院医学研究科呼吸器内科学の浅井 一久准教授、古川 雄一郎大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科博士課程4年)らの研究グループは、2015年6月から2021年12月に大阪市立大学医学部附属病院で呼吸筋力を測定したCOPD患者208名(平均70歳)を対象に、呼吸筋力がCOPD増悪に及ぼす影響を分析。その結果、呼吸筋力が低い患者群では、COPD増悪の頻度が高いことが分かりました。また、呼吸筋力の低下が全身の骨格筋量や骨格筋力の低下に先行して起こる可能性が示唆されました。今後は、呼吸筋力の向上がCOPDの予後にどのような影響を与えるか検証を進めていきます。
本研究成果は、2025年2月27日に国際学術誌「Respirology」のオンライン速報版に掲載されました。
本研究により、呼吸筋力の低下がCOPDの増悪に関与することを示し、呼吸筋機能が疾患の進行や早期予後の指標となる可能性を明らかにしました。長期的なデータ収集には困難を伴いましたが、患者の健康維持に貢献する新たな道を拓けたことは何よりの喜びです。今後も、実用的なCOPD治療法の確立を目指し、研究を推進してまいります。

古川 雄一郎大学院生
掲載誌情報
【発表雑誌】Respirology
【論文名】Respiratory Muscle Strength as a Predictor of Exacerbations in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease
【著者】Yuichiro Furukawa, Atsushi Miyamoto, Kazuhisa Asai, Masaya Tsutsumi, Kaho Hirai, Takahiro Ueda, Erika Toyokura, Misako Nishimura, Kanako Sato, Kazuhiro Yamada, Tetsuya Watanabe, Tomoya Kawaguchi
【掲載URL】https://doi.org/10.1111/resp.70003
用語解説
※ COPD増悪…COPDを有する患者において、症状が急激に悪化し、通常の治療では十分に対処できなくなる状態。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院医学研究科呼吸器内科学
准教授 浅井 一久(あさい かずひさ)
TEL:06-6645-3916
E-mail:kazuasai[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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