最新の研究成果

より効果的で負担の少ない新たな大腸内視鏡前処置法を検証

2025年3月28日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇大腸内視鏡検査前には、腸管洗浄剤を大量に服用し腸管をきれいにする必要があるが、患者の負担が大きいため、服用量が少なく洗浄力が高い、安全な前処置法が望まれている。
◇腸管洗浄剤に慢性便秘症治療薬のリナクロチドを併用する前処置法が有効であることを証明。

概要

大腸内を内視鏡で観察する大腸内視鏡検査は、大腸がんの早期発見に役立ちます。検査前には腸管をきれいにするための前処置が必要で、一般的に、ポリエチレングリコール腸管洗浄剤(PEG)4Lかアスコルビン酸を含むPEG製剤(PEG-Asc)2Lを服用し、腸管を洗浄する方法が用いられます。しかし、どちらも服用量が多く、患者の負担が大きいことが課題です。

大阪公立大学大学院医学研究科 消化器内科学の前田 夏美研究医、東森 啓病院講師、藤原 靖弘教授らの研究グループは、過去の研究でPEG-Ascに刺激性下剤のセンナを組み合わせることで、PEG-Ascの必要量を2Lから1Lに減らせることを証明しました。しかし、腹痛を感じる人の割合が多く、便秘症の患者に対する洗浄効果が乏しかったことから、慢性便秘症の治療薬であるリナクロチドを併用する方法を考案しました。本研究では、日本国内の五つの病院において大腸内視鏡検査を受ける患者1,464人を対象に、前処置としてPEG-Asc 1L+リナクロチド0.5mgを服用する群とPEG-Asc 1L+センナ24mg を服用する群に分けて比較。その結果、リナクロチドを服用した群は、センナを服用した群に比べて洗浄力が高く、患者の負担や辛さの程度(忍容性)に大きな違いはありませんでした。また、年齢や併存疾患などが原因で腸がきれいになりにくい患者においても、リナクロチドを使用した群の方が前処置成功率は高くなりました。本研究結果から、大腸内視鏡検査の前処置において、リナクロチドを補助薬として用いることで、洗浄力、安全性、忍容性の高い理想的な低用量前処置法が実現できる可能性があることが分かりました

本研究成果は、2025年2月25日に国際学術誌「American Journal of Gastroenterology」にオンライン公開されました。

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図 リナクロチド群とセンナ群の効果の検証結果

2019年から、大腸内視鏡検査の前処置法について研究を続けてきました。「りんご」の花言葉である「最も優れたもの」「選ばれたもの」にちなみ、本研究が大腸内視鏡検査の前処置法として、より良い選択肢となることを願い、Apple試験(Ascorbic acid PEG plus linaclotide for BP)と命名しました。これまでの研究成果が、より効果的で負担の少ない前処置法の確立につながり、ひいては日本の大腸がんによる死亡率の低下に貢献できることを願っています。

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前田 夏美研究医

掲載誌情報

【発表雑誌】American Journal of Gastroenterology

【論 文 名】Efficacy of 1 L polyethylene glycol plus ascorbic acid with linaclotide versus senna for bowel preparation: A multicenter, endoscopist-blinded, randomized controlled trial (Apple trial)

【著  者】Natsumi Maeda, Akira Higashimori, Daijiro Kabata, Ikki Yamamoto, Tsuyoshi Yanagida, Daiyu Kin, Yuji Matsumoto, Rieko Nakata, Atsushi Hashimoto, Akinari Sawada, Hirotsugu Maruyama, Junichi Okamoto, Takayuki Katsuno, Yuji Nadatani, Masaki Ominami, Shusei Fukunaga, Kenichi Morimoto, Shuhei Hosomi, Fumio Tanaka, Masami Nakatani, Koichi Taira, Eiji Sasaki, Takashi Fukuda, Keiko Ota, Hisako Yoshida, Toshio Watanabe, Yasuhiro Fujiwara

【掲載URL】https://www.doi.org/10.14309/ajg.0000000000003370

資金情報

本研究は、公益財団法人 内視鏡医学研究振興財団の令和4年度助成を受けたものです。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科 消化器内科学
前田 夏美(まえだ なつみ)
TEL:06-6645-3811
E-mail:natsu-0724[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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