最新の研究成果

複数分子からなる人工的な環状積層構造において、電荷やエネルギーが周回する特異な現象を証明

2025年4月8日

  • 理学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇平面構造を持つ人工色素分子の周りに、電子を受け渡しやすいユニット(電子ドナー)8枚が結合した分子を開発。この分子は自発的に2つの分子が合体し、16枚の電子ドナーが環状に並んだ構造を形成することが確認された。
◇複数分子からなる人工的な環状積層構造の中でのトロイダル共役を世界で初めて証明。

概要

自然界では、光合成を行う植物中において色素分子が環状に並んだ集合体をアンテナとして、光エネルギーを効率的に集めて利用しています。このような環状に並んだユニットの間を電荷やエネルギーが周回する現象はトロイダル共役と呼ばれ、これまで人工的な物質では1つの分子内の現象としてのみ知られていました。

大阪公立大学大学院理学研究科の酒巻 大輔准教授、藤原 秀紀教授、工学研究科の松井 康哲准教授、池田 浩教授、新潟大学共用設備基盤センターの古川 貢准教授、京都大学大学院工学研究科の清水 大貴助教らの研究グループは、平面構造を持つ人工色素分子であるフタロシアニンの周りに、電子を受け渡しやすいユニット(電子ドナー)が8枚、柱のように結合した分子を開発しました。

そして、この分子2つは自発的に合体し、16枚の電子ドナーが環状に並んでいることをX線結晶構造解析により解明しました。また、電子ドナー同士は、電子やエネルギーのやりとりが可能なほど近い距離に位置し、光や電荷を与えることによりプラスの電荷がこの輪の中を周回していることがわかりました。これにより、人工的に合成された複数分子の環状積層構造においてトロイダル共役が起きたことを世界で初めて示しました。

本研究成果は、2025年3月25日に国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン公開されました。

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光合成中心に倣った分子の環状積層構造を非常にシンプルな分子設計によって実現し、そこで電荷やエネルギーが回っていることを裏付ける結果が得られました。また、約100年の歴史を持つ機能性色素であるフタロシアニンの新たな使い方を提示できたという点でも重要な結果と考えています。

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酒巻 大輔准教授

 

掲載誌情報

【発表雑誌】Angewandte Chemie International Edition
【論 文 名】Intermolecular Toroidal Conjugation: Circularly Stacked 16 π-Planes Formed by Supramolecular Assembly Enabling Cyclic Charge and Energy Delocalization
【著  者】Daisuke Sakamaki, Koki Tsubono, Minami Nakamura, Daiki Shimizu, Yasunori Matsui, Hiroshi Ikeda, Ko Furukawa, Hideki Fujiwara

【掲載URL】https://doi.org/10.1002/anie.202504353

資金情報

本研究は、科学研究費補助金 基盤研究(A)(課題番号: 21H04564)、基盤研究(B)(課題番号: 20H02726)、基盤研究(C)(課題番号: 18K05264、22K05069)、学術変革研究(A)「高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ」(課題番号: 20H05866、21H05494)、「デジタル化による高度精密有機合成の新展開」(課題番号: 22H05377、24H01092)、公益財団法人 小笠原敏晶記念財団、松籟科学技術振興財団、イオン工学振興財団、泉科学技術振興財団、岩谷直治記念財団の支援の下で実施されました。

用語解説

※ トロイダル共役:複数の原子の間で電子が広がる(=非局在化する)ことを示す電子共役の一種で、環状に並んだ分子の間を電荷やエネルギーが動き回ること。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院理学研究科
准教授:酒巻 大輔(さかまき だいすけ)
TEL:06-6605-7021
E-mail:sakamaki[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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