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プラズマ活性培養液を使用した悪性軟部腫瘍の治療効果を検証 - 医工連携で挑む次世代型医療 -

2025年4月16日

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ポイント

◇プラズマ活性培養液(PAM)を暴露したヒト滑膜肉腫細胞は生存率が低くなった。
◇滑膜肉腫マウスの腫瘍周囲にPAMを4週間注射したところ、滑膜肉腫のサイズと重量が大きく抑制された。

概要

滑膜肉腫は悪性の腫瘍で、手足などの表皮から深い部分に神経や血管を巻き込んで腫瘍ができることがあります。手術では完全な切除が難しい場合もあり、化学療法や放射線療法では正常な細胞にも影響を及ぼすため、より安全で効果の高い治療法が望まれています。

大阪公立大学大学院医学研究科整形外科学の八百 花大学院生(博士課程4年)、豊田 宏光准教授、中村 博亮教授(研究当時、現・大阪公立大学医学部附属病院長)、工学研究科 医工・生命工学教育研究センターの呉 準席教授らの共同研究グループは、プラズマを細胞培養培地に照射して作製したプラズマ活性培養液(PAM)を利用した滑膜肉腫の治療法を考案し、その抗腫瘍効果や副作用を検証しました。その結果、5分間プラズマ照射して作製したPAMを暴露したヒト滑膜肉腫細胞は、生存率が約21%に低下しました。また、滑膜肉腫マウスの腫瘍周囲にPAMを4週間毎日注射したところ、コントロール群に比べて滑膜肉腫のサイズは約46%、重量は約59%に抑制されました。本研究結果から、PAMが滑膜肉腫に対して細胞および生体レベルで抗腫瘍効果があることがわかりました。また、体重減少や摂食不良などの明らかな副作用もみられませんでした。今後PAMが滑膜肉腫治療の新たな選択肢の一つとなる可能性があります。

本研究成果は、国際科学誌「Biomedicines」に2025年2月20日にオンライン掲載されました。

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図 プラズマ活性培養液の作製

ペンシルタイプの低温大気圧プラズマ照射装置からプラズマを細胞培養培地に照射し、PAMを作製。

<八百 花大学院生のコメント>

滑膜肉腫の治療法は日々進歩していますが、手術で切除しきれなかったり、抗癌剤の副作用に苦しめられたりと、まだまだ多くの問題点があります。プラズマ活性培養液を用いた今回の研究をさらに発展させ、今後プラズマ活性溶液が滑膜肉腫治療の新たな選択肢の一つになることを目指しています。

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掲載誌情報

【発表雑誌】Biomedicines
【論 文 名】Anti-Tumor Effect of Non-Thermal Atmospheric Pressure Plasma-Activated Medium on Synovial Sarcoma: An In Vitro and In Vivo Study
【著  者】Hana Yao, Hiromitsu Toyoda, Naoki Takada, Naoto Oebisu, Kumi Orita, Yoshitaka Ban, Kosuke Saito, Katsumasa Nakazawa, Yuto Kobayashi, Hiroshi Taniwaki, Chinatsu Ohira, Jun-Seok Oh, Tatsuru Shirafuji, Hidetomi Terai, Hiroaki Nakamura

【掲載URL】https://doi.org/10.3390/biomedicines13030534

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:豊田 宏光(とよだ ひろみつ)
TEL:06-6645-3851
E-mail:h-toyoda[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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