
最新の研究成果
地球中心を超える圧力領域まで9つの物質の圧縮挙動を決定 ~巨大惑星深部科学・物性科学の発展へ貢献~
2025年4月18日
- 理学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇特殊な先端形状の高圧発生装置を独自に開発し、地球中心圧力(365万気圧)を大きく超える430万気圧までの高圧実験を実現
◇9つの物質について相互に整合的な状態方程式(“圧力計”に相当)を決定
◇数百万気圧の圧力領域において、どの物質を圧力標準物質として使うかによって生じていた既存の圧力値推定の矛盾を解消し、より信頼性の高い”圧力計”を提案
◇地球中心圧力を超える圧力領域での、巨大惑星深部研究から超伝導研究まで幅広い科学分野の進展に寄与
概要
愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの境毅 准教授と出倉 春彦講師、石松 直樹教授、高輝度光科学研究センターの門林 宏和研究員、河口 沙織主幹研究員、関澤 央輝主幹研究員、新田 清文研究員、大阪大学大学院基礎工学研究科附属極限科学センターの中本 有紀助教、清水 克哉教授、大阪公立大学の瀬戸 雄介准教授からなる研究チームは、9つの物質(鉄、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、白金、金、酸化マグネシウム、塩化ナトリウム)について、地球中心圧力を超える最大430万気圧までの圧力と体積の関係(状態方程式)を決定することに成功しました。状態方程式は高圧実験において“圧力計”として用いられますが、本研究でこれら9つの状態方程式が相互に整合的となったため、数百万気圧の極高圧実験においてどの物質を“圧力計”として使うかによって生じていた今までの圧力値推定の矛盾が解消されました。
ダイヤモンドアンビルセル
写真は試料設置前の上下のダイヤモンドのみの状態を横から見たもの。
本研究の結果は地球中心圧力を超える極高圧領域に適用可能な“圧力計”を提供します。これにより、天王星や木星、あるいはスーパーアースのような系外惑星といった地球よりも大きな惑星の深部に対応するような圧力をより正確に見積もることが可能になり、今後の惑星深部研究に役立ちます。また惑星科学に限らず、超伝導研究に代表される高圧物質科学分野にも広く用いられることが期待されます。
本研究成果は、英国の科学雑誌「Communications Materials」に 4月17日に掲載されました。
掲載誌情報
【発表雑誌】Communications Materials
【論文名】The equations of state of nine materials up to 0.43 TPa for extreme pressure science
【著者】Takeshi SAKAI, Hirokazu KADOBAYASHI, Yuki NAKAMOTO, Haruhiko DEKURA, Naoki ISHIMATSU, Saori KAWAGUCHI-IMADA, Yusuke SETO, Oki SEKIZAWA, Kiyofumi NITTA, Katsuya SHIMIZU
【掲載URL】https://doi.org/10.1038/s43246-025-00792-5
資金情報
本研究は、JSPS科研費(17H02985、21K18155、20H05644)からの支援を受けて実施しました。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院理学研究科
准教授 瀬戸 雄介(せと ゆうすけ)
E-mail:seto.y[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6967-1834
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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