プロジェクトの目指すところ
近年、不可逆的細胞増殖停止である細胞老化をおこした細胞(老化細胞)が、個体老化における加齢性病態や慢性疾患、がんなどを増悪させる作用があることが明らかになってきました。その原因は、加齢に伴って生じる幹細胞老化による組織修復不全や細胞老化随伴分泌現象(senescence-associated secretory phenotype, SASP)による慢性炎症の持続等によると考えられています。そのため、老化細胞除去やSASPの抑制など、老化細胞を制御することが、健康長寿につながると考えられ、国際的にも細胞老化の個体における役割解明とその制御に向けた研究が重要視されています。特に平均寿命が高く高齢者人口が多い東アジア地域では喫緊の課題のひとつです。
本研究グループでは、細胞老化が関与する加齢性病態や慢性疾患、がんなどの疾患を対象に、老化細胞がその病態にどのような役割を担っているのかを、モデル生物や疾患マウスモデル、ヒトサンプルを使って明らかにします。老化関連病態や細胞老化がかかわるがん病態に関係する老化細胞の役割や機能、各病態における細胞老化誘導機構についてはいまだ不明点が多く残されています。また各病態における老化細胞の同定や周囲の細胞との相互作用、細胞老化を予測するバイオマーカーや老化細胞をどのように検知し、操作や除去するのかについても、いまだ手法は十分に開発されていません。そこで、これらの不明点を解決するため、本研究では以下の3つの目的を設定し、日中韓3国間合同でこの目的に応じたチームを組み研究を推進します。
(1) 老化の新規バイオマーカーの探索 (チームA)
マルチ・オミックス解析によるバイオマーカーの探索、生体における老化細胞のイメージング法の開発
(2) モデル生物を用いた細胞老化の役割とメカニズム解明 (チームB)
生体における細胞老化の役割解明、モデル生物で老化細胞を操作
(3) 生体における細胞老化の病態生理学的研究 (チームC)
生体における細胞老化の誘導メカニズム解明、SASPを介する老化細胞と周囲の細胞の相互作用解明