研究グループ(2) 発毛のメカニズムに関しての研究および新規脱毛治療薬、
発毛促進剤の開発
研究グループ(2)発毛のメカニズムに関しての研究および新規脱毛治療薬、発毛促進剤の開発
研究内容第1章:表皮基底膜構成分子から見た発毛のメカニズムの解析
毛はその一本一本が毛周期(hair cycle)というサイクルにしたがって、成長期、退縮期、休止期を繰り返す、非常にユニークな臓器です。成長期では毛は徐々に伸長していきますが、ある程度まで伸長するとその後は退縮し(退縮期)、成長が止まってしまう休止期を迎え、そしてまた成長期に入り新たな毛がつくられるというダイナミックな動きを何度も繰り返します。このダイナミックな動きを制御する重要な分子として、我々はラミニン-332、と-511に着目しました。これらは表皮と真皮の境界部に存在する基底膜を構成し、ヒトの皮膚を正常に保つのに重要な役割を担っています。毛周期モデルマウスおよびヒト培養毛包を用いた研究で、ラミニン-511は発毛を促進するアクセルのような働きを、反対にラミニン-332は発毛を抑制するブレーキの役割を担う事が分かり(図1)、このアクセルとブレーキの調節がうまく行われていることが通常の毛周期(成長期から休止期)で重要であることを報告しました(Sugawara et al., J Histochem Cytochem 2007、 Tateishi et al., J Dermatol Sci 2010)。そして化学療法ではこのアクセルであるラミニン-511の発現量が抑制されてしまうために脱毛が誘導される可能性があることをその後の研究で報告しました(Imanishi et al., J Dermatol Sci 2010)。この事実は、もし上記の2つのラミニンの発現を薬剤等でコントロールすることができれば、我々は毛の成長までもコントロールすることが出来うることを示唆します。これらに関しては現在当科で研究中です。
図1
第2章:肥満細胞に関しての研究
毛は毛周期と呼ばれるサイクルを経過することは前述の通りですが、このサイクルには肥満細胞が関与していることが以前から示唆されていました。肥満細胞とは主にアレルギーの場で登場する細胞で、内部にヒスタミンを含めた様々な物質を含んでおり、一旦活性化すると細胞自体があたかも破裂するかのように内部の物質を周囲に放出する(脱顆粒)ことでアレルギー反応などを引き起こすユニークな細胞です。この脱顆粒が毛周期を変える因子の一つであることが分かってきています。我々は、体内に存在する(内因性)カンナビノイドが毛周囲の肥満細胞の脱顆粒とその分化を制御する重要な因子であることを報告しました(Sugawara et al., J Allergy Clin Immunol 2012)。近年我々はさらにこのテーマを広げて、内因性カンナビノイドがヒトの鼻粘膜の肥満細胞をも皮膚の場合と同様に制御することを報告しました(Sugawara et al., J Allergy Clin Immunol 2013)。このことよりヒトの体内には肥満細胞が増えすぎたり、活性化しすぎたりしないようにする機構が備わっていることを示唆します。現在は肥満細胞を制御する他の内因性因子に関しても研究を進めています。また、肥満細胞以外のアレルギー関連細胞が毛周期に与える影響に関しても研究を進めております。
このように当科では“少しでも臨床に還元する”をモットーに研究を行っております。
図2
- 倫理委員会承認No.3778
「難治性皮膚疾患における肥満細胞の役割及び肥満細胞に影響を与える分子に関する解析研究」