僧帽弁形成術
安全性と耐久性のすぐれた方法
僧帽弁閉鎖不全(逆流症)は様々な原因で起こります。その多くは腱索という弁を支えるヒモが伸びたり切れたりすることが原因です。当院では、ドイツのMohr教授が開発した人工腱索を使用した方法(人工腱索ループテクニック)で僧帽弁形成を行い、通算600例以上の経験があります。この方法により、複雑な僧帽弁病変にも対応ができ、過去5年において完遂率は99%です。変性(固くなったり、肥厚したり)の強い場合には、弁形成にこだわらず生体弁置換を行い、安全性と耐久性のすぐれた方法を選択しています。また、通常の心臓手術のリスクが極めて高い場合には循環器内科とのカンファレンスでカテーテル僧帽弁治療(マイトラクリップ)も行っています。
MICS
傷を小さく: 小切開手術への取り組み
MICS (Minimally invasive cardiac surgery: ミックス)手術
数センチの創部で手術を行う小切開手術(MICS) を積極的に導入しています。僧帽弁、三尖弁、大動脈弁手術および心房中隔欠損症に対する手術が対象となりますが、すべての症例に可能ではありません。美容上の理由のみならず、早期に仕事へ復帰できるメリットもありますが、小さな傷からの手術ですので小切開手術用の装備と熟練とが必要です。
ロボット(ダビンチ)手術
ダヴィンチ(da Vinci Surgical System)は、1990年代に米国で開発され、1999年よりIntuitive Surgical社から販売されています。小さな創から内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、医師が3Dモニターを通して術野を目で捉えながら、通常の内視鏡器具ではとうてい不可能な自由で繊細な動きが出来ます。2018年4月から、ロボット手術が保険収載されました。大阪市大では、全国でもいち早くダビンチ手術(da Vinci)を取り入れ2018年6月より開始しております。
4cmくらいの小さな傷とロボットのポートが入る傷で手術を行います。美容面で優れ、身体に与える負担が非常に少ない手術になります。
当院で行っているダビンチ手術は、僧帽弁形成術、三尖弁形成術を中心に行なっております。また、冠動脈バイパス術を小切開で行う際の内胸動脈の採取を、ダビンチを使用して行っております。
da Vinci System
da Vinciのconsole surgeon
da Vinci
ロボットによる僧帽弁形成術
従来は胸の真ん中にある骨(胸骨)を縦切開して心臓に到達して心臓手術をしてきました。最近では、数センチメートル小さな右胸の創部を作り、肋骨の間から心臓に到達する方法で僧帽弁手術を行うことが増えてきています。Minimally Invasive Cardiac Surgery(MICS:小切開低侵襲心臓手術)と言います。従来この方法は、小さな傷から長い手術器械を入れて手術をしてきました。2018年からはダビンチというロボットを用いた手術に移行しました。
標準手術としてのロボット僧帽弁形成術を確立
通算140例のロボット手術を行い、現在ではロボットによる僧帽弁形成術を標準術式として行っています。
(左心耳閉鎖・MAZE手術、心房縫縮などの併施手術も可能です。
人工弁置換が必要な場合には、従来のMICS手術で可能な場合もあります。肺の状態、動脈硬化、心機能の著しい低下症例には原則的にはロボット手術は行いません。
80歳以上の高齢者にも、条件を満たせばロボット手術を行っています。
(注:痛みは個人差があります)
2022年12月現在で本邦では役30施設です。
高額療養制度をご利用ください。
Advantage
ハイブリッド冠動脈治療
胸骨を切らずに低侵襲で狭心症治療を。
MID―CAB(LADへバイパス)+PCI(他枝病変)
左前下行枝(LAD)は最も重要な冠動脈枝です。 左内胸動脈クラフトを用いたLADへのバイパスは良好に長期開存し、その有用性か再認識 されています。心拍動下にLADへの1枝バイパスを小切開で行い、右冠動脈および左回旋枝へはカテーテル治療(ステント)を行い、多枝病変治療に対応します。
冠動脈バイパス術(血管吻合)をロボットで行うことは保険で認められていませんが、内胸動脈を剥離する操作はロボットを用いて行えます。
ロボットで内胸動脈を剥離する利点は?
ロボットでの剥離
3つのポートのみであり、術後疼痛軽減。
従来法(直視下剥離)
開胸器でおおきくつり上げるため、肋骨の痛みがある。
左胸の小さな傷で血管吻合
(人工心肺を使用せずに心拍動下に吻合)
Hybrid
高機能なハイブリッド手術室で
精度の高い安全な治療を提供
ステントグラフトによる大動脈瘤治療
開胸・開腹などを行わずに大動脈ステントグラフト治療をおこなっています。従来の開胸・開腹手術が望ましい場合でもありますので、病態に応じた治療方法の選択をします。
開胸を行わないdebranching TEVAR
左総頸動脈-左鎖骨下動脈バイパス術後にステント挿入
右総頸動脈-左総頸動脈バイパス, 左総頸動脈-左鎖骨下動脈バイパス術後にステント挿入
経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)
鼠径部動脈からあるいは心尖部からカテーテルを利用して大動脈弁に人工弁を留置します。従来の開心術のリスクの高い場合にこの方法を選択します。循環器内科と心臓血管外科が共同で治療にあたっています。2016年より開始し、現在200例以上行いました。
積極的な下肢救済ができる難易度の高い下腿動脈バイパス
下腿動脈バイパス術
下肢閉塞性動脈硬化症に対して、診断から保存的治療、血管内治療、下腿動脈バイパス術を用いて下肢救済を心がけています
主な対象疾患
弁膜症 | ||
僧帽弁閉鎖不全症 | 僧帽弁狭窄症 | 大動脈弁狭窄症 |
大動脈弁閉鎖不全症 | 三尖弁閉鎖不全症 | 三尖弁狭窄症 |
虚血性心疾患 | ||
狭心症 | 心筋梗塞 | 心筋梗塞後合併症 |
大動脈瘤、大動脈解離 | ||
胸部大動脈瘤 | 腹部大動脈瘤 | 急性大動脈解離 |
慢性大動脈解離 |
先天性心疾患、その他 | ||
心房中隔欠損症 | 心室中隔欠損症 | 心臓腫瘍 |
末梢血管 | ||
閉塞性動脈硬化症 |