小児外科
小児外科はこどもの外科疾患に対する治療を専門に行う部門です。
大人の外科と何が違うかといいますと、まず疾患そのものが違います。大人の外科疾患のほとんどは、悪性腫瘍や心疾患、胆石など、長く生きている間に生じた経年変化によるものが原因です。これに対し、こどもの外科疾患のほとんどは先天性の異常が原因です。そのため、治療法も予後も大きく違います。さらに臓器の大きさが違います。例えば体重3㎏の新生児と60㎏の男性とでは、20倍の差があります。その分組織は脆く傷つきやすく、少量の出血で容易に貧血になります。ですので、小児外科疾患の特色と小児の身体的特徴を熟知した小児外科医が、治療を担当するべきだと考えられています。
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漏斗胸外来開設
小児外科は、新生児から中学生、あるいは重症心身障害児などさまざまな病児の、全身の臓器(頭頚部、胸部、消化管、肝胆膵、泌尿器、生殖器など)を対象に治療を行います。私も数多くの多岐にわたる疾患の治療に携わってまいりましたが、中でも漏斗胸治療に関しては、現在の標準術式であるNuss手術を日本に初めて導入した植村貞繁先生に師事し、現在も定期的に手術に参加しております。当科にも漏斗胸専門外来を開設しておりますので、お悩みの方はお気軽にご相談ください。
診療科の特色
小児外科はこどもの外科疾患に対する治療を専門に行う部門です。
大人の外科と何が違うかといいますと、まず疾患そのものが違います。大人の外科疾患のほとんどは、悪性腫瘍や心疾患、胆石など、長く生きている間に生じた経年変化によるものが原因です。これに対し、こどもの外科疾患のほとんどは先天性の異常が原因です。そのため、治療法も予後も大きく違います。さらに臓器の大きさが違います。例えば体重3㎏の新生児と60㎏の男性とでは、20倍の差があります。その分組織は脆く傷つきやすく、少量の出血で容易に貧血になります。ですので、小児外科疾患の特色と小児の身体的特徴を熟知した小児外科医が、治療を担当するべきだと考えられています。
対象疾患
新生児疾患(先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、直腸肛門奇形、横隔膜ヘルニア、先天性腎腫瘍など)、悪性腫瘍(神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、卵巣腫瘍、横紋筋肉腫など)、胸部疾患(漏斗胸、嚢胞性肺疾患、肺分画症など)、消化器疾患(肥厚性幽門狭窄症、胃食道逆流症、腸重積症など)、肝胆道系疾患(先天性胆道拡張症、胆道閉鎖症、脾腫など)、泌尿器疾患(腎盂尿管移行部狭窄症、膀胱尿管逆流症など)、小児外科一般(鼡径ヘルニア、臍ヘルニア、停留精巣,、急性虫垂炎など)、他(胃瘻造設術、中心静脈カテーテル留置術など)。小児外科は、心臓を除くすべての胸腹部臓器(肺、食道、胃、肝臓、小腸、結腸、腎臓、膵臓、胆嚢、生殖器など)を治療対象とします。成人と比べると疾患の発生数はとても少なく、そのぶん小児外科医も多くありません。そのため一人の小児外科医が担う疾患の守備範囲は自ずと広くなります。日本小児外科学会では小児外科専門医は、全身の小児外科疾患に関する広い知識と治療経験を持つことが求められています。
当科の特色
幅広い分野の治療が可能
新生児外科疾患、小児悪性腫瘍、その他、呼吸器疾患、消化器疾患、肝胆道系疾患、泌尿器疾患など幅広い分野の治療が可能です。必要に応じ、他科と連携して治療を行います。近年、普及してきた鏡視下手術に関しても、積極的に導入しております。
また重症心身障害児に対する外科治療も行っております。手術だけではなく、術前評価から、ご本人やご家族にとっての最適な治療を検討、選択し、術後もフォローアップしております。
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トピックス
漏斗胸とは
前胸部の中央が凹んでいる変形を漏斗胸と呼びます。程度や形状には個人差があり、胸板が薄くなだらかに凹んでいるものや、中央が特に急峻に凹んでいるものなどがあります。胸部の真ん中、凹みの真下には心臓があり、凹みによって心臓の場所が変わっていたり、心臓が圧迫されているように見えることもあります。
頻度
1000人に1人くらいの頻度とされていますが、その中でもより重症であったり、ほぼ正常であったり、程度は様々です。3:1程度で男性に多いとされていますが、近年女性患者の頻度はもう少し高いのではないかといわれてきています。
原因
漏斗胸の原因はわかっていません。家族内発生がみられることが多く、また、先天性の疾患(マルファン症候群、ムコ多糖症など)に合併することがあり、遺伝性の要因があると考えられています。
自然経過
多くの方は乳幼児期から前胸部の陥凹があり、加齢につれて増悪していきます。とくに成長期、身長が急激に伸びる時期に変形が進むことが多いようです。成長とともに軽快してゆくことはあまりありません。
症状
通常、幼少時には自覚症状はほとんどありませんが、思春期になると、胸痛、動悸、労作時呼吸苦、持久力の低下などを自覚することがあります。また、中年期以後に不整脈のリスクが高くなるという報告があります。
健康への影響
大規模研究では、漏斗胸患者の平均寿命は健常人と変わらないとされ、生命予後には影響しないと考えられています。しかし、上に示しましたように、様々な程度の症状を引き起こすことがあり、また、心肺機能については正常人よりも劣っているという研究があります。たとえ無症状でも見た目を気にする方もしばしばおられます。
漏斗胸に対する治療
漏斗胸はほとんどの場合生命にはかかわりませんが、自覚症状の程度や整容面での必要性から治療対象となります。
① 外科治療
重症の漏斗胸に対しては、1940年ころから様々な手術が行われるようになりました。なかでも1998年に発表されたNuss手術は、従来の手術よりも低侵襲で効果が高いことから、全世界に爆発的に普及し、現在の標準術式となっています。ただし、漏斗胸の重症度や年齢によっては、Nussの標準術式では治療困難なことがあり、それぞれ症例に応じた工夫が必要となります。
② 保存的治療
2006年に、漏斗胸に対するバキュームカップを用いた保存的治療法が報告されました。大型の吸盤を前胸部に装着し、陰圧で胸壁を持ち上げます。これを1日数時間、半年から1年程度続けると、陥凹がある程度軽減します。根気が必要で、手術に比べると効果は限られています。また、バキュームの道具は保険適応外のため、購入には実費が必要になります。
当科の中岡は2005年から2009年まで、川崎医科大学小児外科でNuss手術を日本に初めて導入した植村貞繁先生に師事し、現在も西宮渡辺心臓脳・血管センターで毎週漏斗胸手術に関わっております。複雑な形態の漏斗胸、再手術症例、成人症例など、治療が困難な漏斗胸にも可能な限り対応いたします。
Nuss術前
Nuss術後
対象疾患
新生児疾患(先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、直腸肛門奇形、横隔膜ヘルニア、先天性腎腫瘍など)
悪性腫瘍(神経芽腫、肝芽腫、腎芽腫、卵巣腫瘍、横紋筋肉腫など)
胸部疾患(漏斗胸、嚢胞性肺疾患、肺分画症など)
消化器疾患(肥厚性幽門狭窄症、胃食道逆流症、腸重積症など)
肝胆道系疾患(先天性胆道拡張症、胆道閉鎖症、脾腫など)
泌尿器疾患(腎盂尿管移行部狭窄症、膀胱尿管逆流症など)
小児外科一般(鼡径ヘルニア、臍ヘルニア、停留精巣,、急性虫垂炎など)
他(胃瘻造設術、中心静脈カテーテル留置術など)
小児外科は、心臓を除くすべての胸腹部臓器(肺、食道、胃、肝臓、小腸、結腸、腎臓、膵臓、胆嚢、生殖器など)を治療対象とします。
成人と比べると疾患の発生数はとても少なく、そのぶん小児外科医も多くありません。そのため一人の小児外科医が担う疾患の守備範囲は自ずと広くなります。日本小児外科学会では小児外科専門医は、全身の小児外科疾患に関する広い知識と治療経験を持つことが求められています。