2024年度FD研修会 「科学計算と数学」

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お知らせ

参加希望の方は, こちらから
(参加登録は3月6日PM 3:00までに行ってください。)

開催日: 2025年3月7日(金)15:00~17:10
場 所: 大阪公立大学 理学部E棟4階  数学大講究室(E408) オンライン併用(Zoom)
共 催: 理学研究科FD委員会・大阪公立大学数学研究所(OCAMI)
ポスターPDFをご覧ください。

概要

理学研究科主催(理学研究科FD委員会・数学研究所共催)の「新たな大学院教育の展開のためのFD研修会」を開催します。 尚、本FD研修会は,平成20年度に、当時の理学研究科長・今吉洋一先生のリードで開催された数学科主催の 理学研究科FD研修会 「現代理学において数学はどのように使われるか?」に始まり, これまでの理学研究科FD研修会 に続く第16回です。
学生,教職員,研究者,一般の方など,どなたでもご参加できます!!

プログラム

15:00~15:05  開会

15:05~15:55
前園 涼氏(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学系・教授)
講演タイトル  :  電子状態計算をベースとするマテリアルズインフォマティクスの最近の進展
講演アブストラクト:  私が専門として取り組んできた標記の課題において「どんな箇所に、どのような数学が現れるのか」を紹介しながら、「形式科学としての数学」と「自然科学の実務数理」での「抑えどころ」の違いに関する経験や失敗談、雑感を述べたいと思います。最近のインフォマティクスの進展で、形式科学がより身近になってきていることを紹介します。年齢を重ねるごとにジワジワと感じる「高等教育における教養として重要な形式科学」についても所感に触れたいと思います。

16:15~17:05
西浦 廉政 氏(北海道大学 電子科学研究所・名誉教授)
講演タイトル  :  隠れた不安定性と数理モデル
講演アブストラクト :  ミクロの振る舞いからマクロな性質を取り出し,その本質を理解することは数理モデルの重要な使命の一つである.本講演では,個々の要素は均一で不安定な要素がないと思われるのに,マクロには想像もできない大きな変化と多様性を示す具体例2つを社会現象と材料科学から選び,その裏で駆動する不安定化機構を紹介したい.古典的なミクロ-マクロ連関の成功例は気体分子運動論である.マクロな熱力学の圧力や温度がミクロの分子の動きから導出することができた.ボルツマン方程式もこの流れにある.ここにおける重要な仮定は「均質性」である.個々の原子や分子に個性はなく均質である.結果としてそれらがたくさん集まると平均化され,統計則が成り立ちマクロな性質につながる.これまで人が直接関わる社会現象には,このようなアプローチは困難であると考えられてきた.それは均質化の仮定が満たされず,また十分な要素数も不足であった.しかし世界のグローバル化が進み,様々な情報は瞬時に伝搬し消費されていく現代においては.人々の価値観がほぼ一つ(私的利益の追求)に収斂し(均質化),ミクロレベルでの多様な考え方は駆逐されていく.この全世界的スケールの拡大と均質化は,皮肉なことに数理モデルによる世界の記述を可能にしてくれる.本講演の前半ではこの均質化の必然の結果の一例として,マクロな「オルガルヒ化」(超富裕層と社会の分断)が出現することを紹介したい.一方,材料科学においては,ミクロな分子の形状からマクロな良い物性を生み出すことが使命である.実際,コポリマーからなるナノ微粒子はそのサイズは数百ナノメータであるにもかかわらず驚くべき多様な形態を示す.とりわけプラトン立体のような角をもつ立方体や八面体のような形態が安定に作成できることは極めて反直観的であり,その原理はいまだ完全には解明されていない.一方,その数理モデル化はメソ・マクロレベルでは一定の条件の下で可能であり,連立4階の Cahn-Hilliard 型方程式系で記述される.上のプラトン立体の再現も含め,このモデル方程式は様々な示唆を与えることがわかってきた.とくに複雑な形態制御の裏で非常に多数の「不安定解」から成るネットワークが介在し,それが多様性の源となっていることが明らかになりつつある.その一端を後半で紹介したい.

17:10 閉会