NASSCA光ピンセットってなあに? 3
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博士はどうしてブラックシリコンを使うことを、思いついたんですか?
最初は、プラズモン光ピンセットという光ピンセットを研究していたんだ。
弱いレーザーでも水中のDNAを捕まえられる、とても優秀な光ピンセットなんだよ。
だけど基板に使われている金は高価で、作るのも難しいんだよ。
レーザーを当てた時に起こる熱泳動(ねつえいどう)も問題なんだ。
熱泳動って、なんですか?
金に限らず、金属の基板は、レーザーを当てた箇所に熱が出るんだ。
その熱で温まった水と、そうでない水との温度差で、熱泳動という水の流れができるんだよ。
熱泳動が大きくなると、上手く物を捕まえることができなくなってしまうんだ。
もちろん、熱泳動を利用する研究もあるんだけどね。
私は熱泳動が起きないようにしたいと思って、熱の出ないブラックシリコンを使ったんだ。
ブラックシリコンは黒いから、熱が出そうですけど。
確かに黒い物は、光を吸収して熱が出るね。
ブラックシリコンは光を吸収せず、横に逃しているから熱が出ないんだよ。
表面のギザギザが効いているんですね!
トラッピ博士のメモ帳
レーザーの当たる範囲は、基板上のマイクロメートル(μm)単位の範囲です。
たとえ5℃ほどの温度上昇でも、マイクロメートルの世界では、
通常では考えられないほど大きな温度差なのです。
この大きな温度差によって、水に力が加わり、熱泳動が起こります。
ブラックシリコン基板では熱泳動が起こらないので、様々な実験が可能となるでしょう。
(C) 2018 M. Yoshioka