取り組み事例
2024年8月19日
- 環境マネジメント推進室
建設現場における環境への取り組み
【杉本キャンパス】戸田建設株式会社
新校舎の施工を担当されている戸田建設株式会社さまに取材をおこない、建設現場での取り組みや、新棟の環境性能の向上についてお話をうかがいました。
▲ 杉本キャンパス理学部新棟の完成イメージ図 |
廃棄物ゼロエミッションへの貢献
建設資材には使用済みの資材をリサイクルしたものが使用されています。例えば、鉄筋棒鋼を除く鋼材は電炉再生鋼材が使われています。
また、内装材となる集成材合板は、間伐材・残材等が活用され、シックハウス症候群の原因の1つとなるホルムアルデヒドの発散が少ない「F☆☆☆☆」※の材料や、それに相当する材料が使用されています。
このように、発生した廃棄物の全てを資源として再度有効に利用する「廃棄物ゼロエミッション」に取り組み、2000年時点で建設会社初のゼロエミッションを達成されたそうです。
※ F☆☆☆☆…Fは、ホルムアルデヒドの発散濃度を示す基準です。”F☆☆☆☆”は、ホルムアルデヒドの放散速度が5μg/m2hと非常に小さく、健康被害の少ない製品です。
建設汚泥のリサイクルと施工時での工夫
▲建設現場で発生した残土を分別 |
国土交通省の「建設汚泥再生利用手順」および「建設汚泥再生利用マニュアル」に従い、建設時に発生した汚泥もリサイクルされ、再生土として利用されています。 施工方法も工夫されています。例えば、所定の勾配にするために斜面上の不要な土砂を撤去する法切工をやめ、周りの地面を固めたり支えたりする簡易山留を採用することで、掘削土、埋戻し土そのものを減らすよう努められています。 |
キャンパスの断熱性能向上策
エネルギーを過剰に消費しないゼロカーボンキャンパスを目指すために、建物自体の環境性能をより一層重視して設計されています。
例えば、建物の断熱性能を向上させるような設計がおこなわれました。断熱材にはノンフロン吹付発泡ウレタンが使用されています。発泡ウレタンの主剤と発泡剤を混ぜながら噴射していくため、高い密着性を保ちながら充填したい個所に隙間なく施工することが出来て熱が逃げにくくなり、工期短縮にもつながります。さらに、自己接着性が強く経年でずれ落ちにくくなるため、50年後を見据えた環境負荷を考えた学舎には最適とのことです。
騒音対策について
▲ 超低騒音型重機とステッカー |
工事をおこなう上では騒音が発生してしまいます。 低騒音型建設機械が使用され、騒音を(救急車のサイレン音に相当する)85dB以下に抑えるなど物理的な抑制のほか、心理的な騒音リスクの低減もおこなわれています。大学事務に工事予定を提出して調整をおこなうほか、現場では毎週定例会を開き、試験期間や行事など騒音を抑制しなければならない時期について共有し、騒音を全体的に抑制するような取り組みがおこなわれています。 |
大気汚染対策について
散水などをおこなうほか、基礎工事などで掘り返した土を仮置きする際はシートで覆うなど、粉塵の抑制がなされています。また工事現場の外周に囲いを設置することで、付近を通行する学生や教職員などへの影響の低減もおこなわれています。
アスベストに関しては、今回では建物の解体工事は無く、また新規に建設する学舎にも使用しないため、そもそも対策する必要が無かったとのことです。
杉本キャンパス理学部新棟建設現場における建設の過程
2022年7月 |
2022年9月 |
2023年3月 |
2023年9月 |
【中百舌鳥キャンパス】 鹿島建設株式会社
▲ 中百舌鳥キャンパス工学部新棟の完成イメージ図 (左:工学新棟 / 中央:センター棟 / 右:流体力学棟) |
大学での工事ならではの取り組み
騒音・振動対策編
授業や実験などがおこなわれているすぐそばで工事を実施するにあたり、特に力を入れられたのは騒音・振動対策だそうです。
重機を使用する前にコンピューターによる騒音シミュレーションの実施や超低騒音建機の採用のほか、「アクティブ・ノイズ・コントロール」と呼ばれる、発生する騒音の逆位相の音を発生させ減音を図る装置を使用するなど、ハイテクな取り組みが数多く使用されていることを知りました。「ここまで徹底的におこなっている現場もそうそうない」と仰るほど、細かい部分まで注意を払われていました。
「定期試験や入試の際、また授業が多く重なっている13時~15時の時間帯には大きな音が出る作業はなるべく実施しない」「騒音・振動が発生するトラックによる運搬作業などは休み時間におこなう」など、細かく作業スケジュールの調整もおこなわれているそうです。
環境調査編
工事実施にあたり、事前にとある場所で環境モニタリングが実施されていました。その場所とは…府大池です!掘削や地盤改良によって、府大池の生態系に影響が出ないよう、月に1度、府大池の水質を調査されていたそうです。
一般的な工事でもおこなわれている“粉塵対策”の取り組み
工事の際には必ず粉塵が発生するので、舞い上がるのを防ぐため、地面に水を撒くことが一般的ですが、今回は鹿島建設が開発した帯電ミストを現場で発生させ、散布されていたそうです。電荷を帯びたミストを使用することで、静電気力により浮遊する粉塵がミストに吸着し、より確実に粉塵の飛散を抑えることが可能です。
土を仮置きする際には、鹿島建設が開発した粉塵飛散防剤を表面に散布することで、皮膜を形成させ粉塵の飛散の防止に努められていたそうです。
新学舎での環境への取り組み
今回の事業では、鹿島建設さまは解体建設工事のほか、新校舎の設計にも一部参加されていました。ここでは、新センター棟での環境負荷低減の取り組みを紹介します。
本法人からは、発注の段階では環境負荷低減のための設備などに関する特別な要求はありませんでしたが、可能な範囲でおこなわれたゼロカーボンへの取り組みとして、天井や壁に木材を使用すること、建物正面に日射遮蔽のためのルーバーを最適配置すること、敷地内の緑化などが挙げられます。
そのほか、一般的な取り組みとして、グリーン調達の推進、廃棄物から再資源化された鋼材である電炉鋼材の使用などがおこなわれていました。
皆さんは、今回の新学舎の整備事業をどのように感じていましたか?
もちろん、この工事による影響がゼロだったということではありませんが、これだけ多くのご配慮をしていただいたことを少しでも知っていただければ、受け止め方も変わるのではないかと思います。
学生コメント
私たちがこれから使う施設を建設するために、ゼロエミッション施工の実現に向けてさまざまな取り組みがおこなわれていること、また単に建物を建てるだけではなく、環境に配慮しながら建物を建てることが建設会社に求められていることを今回の活動で実感しました。
入札時の要件として、本法人は環境負荷を低減するような施工や環境に配慮した設計を特に求めていなかったと聞きました。新学舎の実際の設計計画を聞いても、先進的な環境への取り組みがおこなわれているとはいいがたいように感じました。
予算の問題はありますが、せっかく新しい学舎を建設するのであれば、再生エネルギー100%を目指すなど、進んだ配慮を期待していただけに残念な気持ちもあります。しかし、さまざまな工夫のおかげで設計・施工がすすめられていることを知り、新しい学舎が多くの人に利用されるのが楽しみです。
▲ 杉本キャンパス取材時の様子 |
▲ 中百舌鳥キャンパス取材時の様子 |
その他本法人の環境パフォーマンス・環境活動は「公立大学法人大阪 環境報告書」をご覧ください。
該当するSDGs