取り組み事例
2024年8月26日
- 環境マネジメント推進室
大学におけるSDGsの達成に向けて
SDGs戦略会議とは?
本法人は、大阪公立大学・大阪府立大学・大阪市立大学・大阪公立大学工業高等専門学校の4機関から成る組織です。SDGs達成への社会的責任を認識し、理事会役員の指導の下でSDGs戦略会議が設立されました。この会議の役割は、大学の「Seeds」(研究開発や人材、設備)を結びつけて効果的に発信し、SDGs達成へ貢献することです。他の戦略会議や戦略室と協力して、活動成果を共有します。大学の「Seeds」を集約するブレインとしての役割を果たして、法人のSDGs推進に向けた提案を行う参謀のような役割が求められます。
▲ 大阪公立大学現代システム科学研究科 大塚耕司先生 |
SDGs戦略会議の取り組み
SDGs戦略会議は何かを実行する会議ではなく、実行する会議は各推進室が行っています。戦略会議は情報交換や戦略の検討がメインであり副学長や理事で構成されていますが、 SDGs戦略を本当に実行していこうとすると、もっと職員や学生が入ってこなければなりません。
CNコアリション推進室や環境マネジメント推進室においては、学生のアイデアや意見をより多く取り入れ、室同士の連携も促そうとしています。
また、大阪・関西万博出展推進室ではV-station※の学生の協力で横のつながりが取れています。4月の環境報告書の発表会にも、V-stationの学生が参加してくれました。
※V-station:大阪公立大学ボランティア・市民活動センターV-station
昨年度と比べて、今年度のSDGs戦略会議での新しいプロジェクトや進展について
CNコアリション推進室は、ゼロカーボンキャンパスの推進に取り組んでいます。
最近、2050年までのロードマップをウェブサイトに掲載し、注目を集めています。また、環境マネジメント推進室では、省エネのECOアイデアコンテストによりエネルギーの解決策を募集しています。エネルギー価格の上昇に対応して、省エネの提言を通じて成果を上げる予定です。さらに2023年5月から京都大学京都大学大学院総合生存学館との交流が始まりました。異なる学科の人々が協力し持続可能な社会を実現するために、研究のプレゼンや学生同士の交流を通じて取り組んでいます。
こうして昨年は理事には報告できなかった成果も、7月のSDGs戦略会議で報告することができました。
大学全体としてSDGsの実効性を高める為に考えられていること
大学全体でのSDGsに向けた取り組みとして、ゼロカーボンキャンパスに向けゼロカーボン達成のための具体的な方針を示したロードマップを作成することになっています。
例えば、現在SDGsに関わるような様々な研究をされている先生方の研究のターゲットをある程度ゼロカーボンへ集約することで、大学全体としてのゼロカーボン化という目標が明確に見えてくるようになり、学内におけるSDGsの実効性も高まるのではないかと考えています。
昨年度の環境報告書や環境マネジメント推進室で、より知ってもらうための改善点
ECOアイデアコンテストを目玉として大きく売り出すことが効果的だと思います。これまでの環境報告書を見ていると、個々の取り組みや先生方の研究に対して取材をおこない、それを紹介するというパターンでした。しかし、 ECOアイデアコンテストはそれらとは異なって、環境マネジメント推進室そのものが牽引している一大イベントです。それを強調して今年の環境報告書を作ってもらったらアピール度が高まると思います。
SDGs戦略のその先について
2030年の期限が最終的なゴールではないと思います。
日本はアジアの中でリーダーシップをとり、アジア全体で地球のサステナビリティに貢献できるような立場になる必要があると思っています。SDGsの検証をしながら、アジアの中でどう引っ張っていけるか、発信できるかを頭に入れつつ、日本なりにSDGsビヨンドのゴールを作っていくことが重要です。
SDGsそのものがゴールではなく、サステナビリティを作り上げるための推進エンジンの一部と考えてください。そのため、あまりSDGsにこだわる必要はありません。各々が自身にとって理想的なサステナビリティや持続可能な社会を作るために貢献できることは何かを打ち出すべきで、その道具としてSDGsを使っています。
SDGsを俯瞰的に見るような視点が大事だと思います。
学生コメント 学内での環境報告書と環境マネジメント推進室の認知度は未だ低いですが、ゼロカーボンキャンパスのロードマップ公開やECOアイデアコンテストなどの積極的な活動で環境報告書の認知度向上に貢献していきたいです。 高専への浸透のためにも、公大高専のHPから環境報告書へのアクセスを容易にするべきだと思います。今後も学生主体の活動が全国有数の規模でおこなわれていることに誇りを感じSDGsへの貢献を意識して環境活動を推進します。 |
SDGsと高専の人権教育の取り組み
大阪公立大学工業高等専門学校 鰺坂 誠之 先生 |
SDGsと人権教育 SDGsの17の目標の中でも1・4・5・10が人権に関連する目標だと考えます。その中でも4の「質の高い教育をみんなに」において、人権教育が不足すると差別等にもつながりかねないため人権教育は必要であると考えました。そこで高専でも人権教育を開始したのが『ふらっと高専』です。 5年間で学ぶ人権教育『ふらっと高専』のカリキュラム 『ふらっと高専』は、2018年から講演形式の学校イベントとして始まり、2022年度に人権教育科目となりました。つまり昨年の卒業生が初めて5年間を通して人権教育をおこなった学年です。事前学習・講演・振り返りの順に人権教育をおこない、講演では事前アンケートで集めた質問に当事者の方から回答していただく形式をとっています。人権問題を知ることから始まり、ジェンダー等の多様性への理解・妊娠等の「同意」、外国にルーツを持つ人の課題や社会人になった際の課題などさまざまなことについて学習します。 |
環境問題と人権を考えるワークショップ
インタビュー後に、環境問題と人権に関わる身近な話題を鯵坂先生から取り上げてもらいました。出されたテーマは『現在、福島第一原発の処理水の風評被害が問題となっている。人権の視点から、学生の皆さんはどのような対応を図るべきか?』です。大学生と高専生とのディスカッションの一部を抜粋して紹介します。
大学2年生:福島の漁業の場の近くにミュージアムを提案し観光の場としてPRする 高専5年生:水産物を食べる様子を世界的なインフルエンサーが発信し政府とコラボする 高専5年生:勉強で得た知識や正しい情報を周囲に伝え、汚染水処理の教育をおこなう 高専5年生:現場からの定量的・定性的なデータを環境報告書のようなものにまとめ、国にも提出するなど安心材料として活用する |
このような学生の声を基に、テーマに対してどのような対応を図るべきかを整理しました。
対応①科学的根拠を提示し海外の日本食店で食品の安全性を説明する
対応②地元の声を組織的・国際的に情報発信する
対応③数値的に示すことで不安材料を排除し地元漁業者の声を支援する
対応④風評被害を受けている地域でバザー、ミュージアムなどを開設したりイベントを実施することで認識(イメージ)を向上させる
学生コメント
ブレインストーミングでは意見を平等に出しやすく、多様な知見が得られたと感じました。その価値は、意見をまとめ1つの流れをつくり明確な人権問題へのアプローチを示すことにあります。また、ふらっと高専の講演会も人権問題への理解を促進する素晴らしい取り組みであり大学でも活用できると思います。
その他本法人の環境パフォーマンス・環境活動は「公立大学法人大阪 環境報告書」をご覧ください。
該当するSDGs