研究

 動物の疾病は、病原性生物、化学物質、物理的要因などの外因に依るものと、遺伝性要因、代謝性要因、内分泌性要因などの内因に依るものに大別される。また、罹患する器官により、循環器疾患、呼吸器疾病、消化器疾患、泌尿器疾患、運動器疾患、神経疾患、皮膚疾患に分類される。
これらの治療にあたり、主として薬物をもちいてアプロ-チする疾病を内科的疾病としている。獣医内科学は、内科的疾病の成因、症状、診断法、治療法、予防法などを考究する学問であり、生体を個体レベルで取り扱うことを特徴とする。広範囲に亙るこれらの領域の中で、これまで主に感染症に関わる研究を行ってきた。さらに、獣医内科学研究グループのスタッフは、全員が生命環境科学域附属獣医臨床センターの医員を兼務して診療業務に従事し、臨床材料を用いた臨床獣医学的研究を行っている。所属学生は授業・実習の場合を除き、附属センターにおいて補助スタッフとして診療に参画し、症例を通じて臨床の現場を体験するとともに診断・治療技術を体得する。主な研究内容は以下の通りである。
 1) 細菌性感染症の発生機序と防御方法に関する鶏を用いた研究:
   細菌による感染症はその感染が成立する際に多くの因子が働いている。感染成立を助長したり、感染を悪化させたりする因子は実験モデルを作成するのに有効であるし、逆に腸内フローラのように感染を防御する因子は予防や治療に利用できる。現在はサルモネラとクロストリジウムについて、腸管あるいは生殖器感染における感染の成立メカニズム、生体反応、および防御法について研究している。
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ワクチンの効果を判定するための腸炎菌生殖器感染モデルの作成
サルモネラの血清型と宿主による感染性に相違がみられるメカニズム
サルモネラ感染時の生殖器における免疫担当細胞の動態
サルモネラ腸管感染に及ぼす原虫感染、カビ毒、あるいは環境因子の影響
壊死性腸炎の実験モデルの作成
クロストリジウム感染に及ぼす原虫感染の影響
腸内フローラの細菌性腸内感染防御メカニズム
 2) 原虫感染の宿主・部位特異性に関する研究:
   原虫の多くは感染する宿主や部位が厳密に決まっているようにみえる。この「棲み分け現象」のメカニズムは少しずつ明らかになっており、今後、感染のコントロールへの応用が期待される。
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胞子虫スポロゾイトの単クローン抗体を持ちいた感染部位特異性の解明
スポロゾイトのコーノイド(宿主細胞侵入小器官)の分子生物学的解析
コクシジウムの宿主細胞認識に果たす表面糖残基の役割
イヌのバベシア原虫の感染の宿主・部位特異性免疫学的診断法
水道源からのクリプトスポリジウム原虫の鑑別・診断法の開発
3) 内科疾患に関する発症機序、診断法、および治療法に関する研究
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イヌバベシア感染の免疫学的診断法
イヌの肥満細胞腫に対するモノクローナル抗体を用いた診断と治療
イヌのアトピー性皮膚炎の免疫学的診断および飼養管理
イヌの悪性腫瘍における腫瘍関連抗原の同定と機能解析