大気計測(定永)/ Atmospheric measurements (Sadanaga party)
大気中の微量成分を連続計測する新規測定装置の開発
高い時間分解能,高確度でかつ連続的に大気中の微量成分の測定を行うための装置の開発を行っています。これまで,反応性総窒素酸化物 (NOy),二酸化窒素,硝酸ガス,粒子状硝酸,有機硝酸の測定装置の開発に成功し,現在大阪公立大学中百舌鳥キャンパス内や,五島列島福江島,能登半島珠洲で連続観測を行っています。
実大気計測による光化学オキシダント生成過程の定量的解明
「光化学スモッグ」という言葉は良く知られていると思います。また,「光化学スモッグ」は半世紀近く前に大きな問題となっていましたが,今では「古い公害問題」と思っている人も少なくないのではないでしょうか?実は現在でも「光化学スモッグ」は存在し,決して「古い公害問題」ではなく,「古くて新しい問題」です。実際に,光化学オキシダントの国内における環境基準達成率は例年ほぼ0%であり,現在でも主に夏季に光化学オキシダント注意報が発令されています。また,その原因も過去の研究で明らかになったことだけでは十分に解明するのが難しいということもわかってきています。我々は,「新しい光化学オキシダント問題」の原因解明に向けての研究を行なっています。具体的には,光化学オキシダントの主成分であるオゾンとその前駆物質の測定データの解析や,それらの測定データの質向上,大気中光化学反応場の解明に必要な物質の測定を目指した測定装置の開発などを行なっています。最近では,オゾンの光化学生成過程についての知見を深めるために,オゾンの光化学生成速度をその場で直接測定する手法を開発に成功しました。
フィールド観測によるアジア大陸からの越境汚染の動態解明
東アジア地域は急速に経済が発展しており,それに伴い大気汚染物質の排出量も著しく上昇しています。これらの汚染物質は越境汚染という形で,日本など東シナ海縁辺地域にも影響を及ぼしています。2010年代前半以降,中国での大気汚染物質の排出量は減少しており,越境汚染の量的な改善は進んでいますが,近年では窒素化合物の寄与が大きくなるなど,越境汚染の質が変化しています。我々は,近年の越境汚染の質が変化するより前から,窒素酸化物を主にターゲットとし,現在五島列島福江島,能登半島珠洲において,反応性窒素化合物の連続観測を行っています。また,連続ではありませんが航空機を用いて東シナ海上空における集中観測も行いました。近年では,それらの窒素酸化物も原因の一つとなる,越境大気汚染による西日本を中心とした春季の高濃度光化学オキシダントも問題となっています。我々は,窒素酸化物の観点から,越境大気汚染による光化学オキシダントのメカニズムの定量的解明に向けての研究も行っています。