最新の研究成果
プラズマ照射で腱の治癒を促進 -医工連携で挑む次世代型 腱再生医療-
2024年5月21日
- 医学研究科
- プレスリリース
ポイント
◇アキレス腱断裂ラットモデルを作製し、プラズマを腱の修復部に直接照射。
◇プラズマ照射により腱の治癒が早く、かつ強度も向上すること確認。
◇プラズマ照射による腱治療を、生体力学的・組織学的観点から多角的に評価。
概要
アキレス腱は、人間の体内で最も大きく強靭な靭帯です。アキレス腱断裂は、30歳から40歳代のスポーツ愛好家に多く起こり、装具固定などの安静加療の期間が長く、スポーツ復帰や職場復帰に時間がかかってしまいます。
大阪公立大学大学院医学研究科 整形外科学の中澤 克優大学院生(大阪市立大学大学院医学研究科 博士課程4年)、豊田 宏光准教授、中村 博亮教授(研究当時)、同大学院工学研究科 医工・生命工学教育研究センターの 呉 準席教授らの共同研究グループは、断裂した腱が修復する(腱がくっつく)までの日数を短縮できる治療法として、低温大気圧プラズマに注目。アキレス腱断裂ラットモデルを作製し、低温大気圧プラズマを生体に直接照射しました。その結果、プラズマ照射した群は、照射していない群(コントロール群)と比べて早期に腱の再生が促進し強度が向上していることが確認できました。また、アキレス腱のコラーゲンの質が改善していることも明らかになりました。現在行われている腱の治療と組み合わせることで、より確実な腱再生や治療期間短縮への貢献が期待されます。
本研究成果は、2024年5月14日、国際科学誌「PLOS ONE」にオンライン掲載されました。
図1 摘出したラットのアキレス腱に低温大気圧プラズマを照射する様子。
低温大気圧プラズマを物質に照射することで、組織を傷めることなくさまざまな効果を与えることが出来ます。私たちはこれまでに骨再生を促進させる効果があることを発見してきました。今回は、腱の再生や治癒も促進させることを発見し、幅広い分野に応用できる技術であることを示すことができました。
(左より)豊田准教授、中澤大学院生、呉教授
掲載誌情報
【発表雑誌】PLOS ONE
【論文名】In vivo study on the repair of Rat Achilles tendon injury treated with non-thermal atmospheric-pressure helium microplasma jet
【著者】Katusmasa Nakazawa, Hiromitsu Toyoda, Tomoya Manaka, Kumi Orita, Yoshihiro Hirakawa, Kosuke Saito, Ryosuke Iio, Akiyoshi Shimatani, Yoshitaka Ban, Hana Yao, Ryosuke Otsuki, Yamato Torii, Jun-Seok Oh, Tatsuru Shirafuji, Hiroaki Nakamura
【掲載URL】https://doi.org/10.1371/journal.pone.0301216
資金情報
本研究は、「知と健康のグローカル拠点事業推進研究」の対象研究です。
研究内容に関する問い合わせ先
大阪公立大学大学院 医学研究科
准教授:豊田 宏光(とよだ ひろみつ)
TEL:06-6645-3851
E-mail:h-toyoda[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
報道に関する問い合わせ先
大阪公立大学 広報課
担当:上野
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。
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