最新の研究成果

バイオフィルムで排水処理! 土台となる発泡プラスチックの性能を検証

2024年8月8日

  • 工学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇プラスチックを発泡させることで表面積が増え、バイオフィルム形成量が増加。
◇活性汚泥から形成したバイオフィルムでも、窒素化合物を問題なく除去できることを確認。
◇廃棄バイオマスを添加した発泡プラスチックでは、さらに性能が高まることを確認。

概要

下水や排水に含まれる窒素化合物は、水環境の悪化や健康被害をもたらす原因となります。窒素化合物の除去方法の一つに、担体の表面に付着した硝化・脱窒細菌が形成する、ぬめり気のある粘着物(バイオフィルム)を用いる方法があります。

大阪公立大学大学院工学研究科の東 雅之教授、尾島 由紘准教授、蒲生 智郷氏(当時 博士前期課程2年)と、関西化工株式会社の共同研究グループは、発泡させたポリプロピレン製の担体(図1)を用いて、バイオフィルムの形成や窒素除去に与える影響を調べました。担体を発泡させることで表面の質感が変化し、細菌が付着しやすくなり、表面積も約3倍に増加します。モデル細菌を用いてバイオフィルムの形成量を比べたところ、発泡担体では形成量が約44倍に増加しました。さらに、活性汚泥を用いて形成したバイオフィルムでも、硝化・脱窒機能が働くことを確認し、合成排水中に含まれる窒素化合物の除去にも成功しました。さらに、発泡プラスチック担体に廃棄バイオマスを添加することによって性能が高まることを明らかにしました。

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図1 ポリプロピレン製の発泡担体

本研究成果は、2024年7月10日に国際学術誌「Environmental Technology & Innovation」のオンライン速報版に掲載されました。

本研究では、発泡ポリプロピレン担体へのバイオフィルム形成を確認し、微生物を保持した担体を硝化・脱窒プロセスに応用しました。発泡ポリプロピレン担体の処理性能を明らかにできて嬉しく思います。初めての論文投稿で不安もありましたが、論文執筆や実験について先生方と議論を重ねて根気強く取り組み、最終的に論文が受理された時は大きな達成感が得られました。今まで指導してくださった先生方、実験材料を提供してくださった会社の皆さま、ありがとうございました。

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蒲生 智郷氏
(筆頭著者、2024年3月卒業)

掲載誌情報

【発表雑誌】Environmental Technology & Innovation
【論文名】Nitrogen conversion performance of a polypropylene carrier designed to promote biofilm formation through foaming
【著者】Tomoki Gamo, Yoshihiro Ojima, Sayaka Matsubara, Yoshihiro Fukumoto, Masayuki Azuma
【掲載URL】https://doi.org/10.1016/j.eti.2024.103747

資金情報等

本研究で使用したプラスチック担体や活性汚泥などは、関西化工(株)より提供を受けました。

用語解説

※ 硝化・脱窒…硝化過程では、排水中のアンモニアなどの窒化化合物が亜硝酸を経由し、硝酸まで酸化される。また、脱窒過程では硝酸、亜硝酸が窒素ガスに還元される。

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研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院工学研究科
教授 東 雅之(あずま まさゆき)
TEL:06-6605-3092
E-mail:azuma[at]omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:竹内
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

該当するSDGs

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