最新の研究成果

頭頸部再建において血管をつないだままの組織の有用性が明らかに

2024年11月1日

  • 医学研究科
  • プレスリリース

ポイント

◇頭頸部再建において、血管をつないだままの皮弁1(有茎皮弁2)を移植する方法の有用性を検証。
◇有茎皮弁を使用した頭頸部再建の治療成績向上に期待。

概要

頭頸部は首から上を指し、呼吸や食事、会話などの重要な役割を果たしています。そのため、顎などにできた腫瘍を切除した場合、切除した部分(欠損部)を埋めて機能を回復させる“頭頸部再建”が行われます。再建には、体の他の部分から皮膚や皮下組織、筋肉、骨などを切り離した組織(遊離皮弁3)を欠損部に移植する方法と、血管をつないだままの組織(有茎皮弁)を移植する方法があります。

大阪公立大学大学院医学研究科形成外科学の小島 空翔病院講師、元村 尚嗣教授らの研究グループは、頭頸部再建において欠損部から離れた位置にある広背筋4の有茎皮弁を使用した22症例を検証。全症例において有茎広背筋皮弁が正常に定着したことが確認できました。本研究によって、患者の状態により遊離皮弁を移植できない場合に、有茎広背筋皮弁での再建が有効であることが明らかになりました。

本研究成果は、国際科学誌「Plastic and Reconstructive Surgery - Global Open」に2024年10月11日にオンライン掲載されました。

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有茎肋骨付き広背筋皮弁で頸部皮膚と下顎骨を再建した症例図

頭頸部再建には遊離皮弁による再建が第一選択ですが、放射線照射後や、一度再建を行なったが皮弁壊死となってしまった場合など、遊離皮弁の使用が躊躇われる症例もあります。そのような症例に対して有茎広背筋皮弁で再建を行い良好な結果を得ました。この方法は、肋骨を付着させれば下顎骨まで再建を行うことができます。本研究により頭頸部再建全体の治療成績が向上することを期待します。

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小島 空翔病院講師

掲載誌情報

【発表雑誌】Plastic and Reconstructive Surgery - Global Open
【論 文 名】Salvage Operation of Head and Neck Reconstruction Using a Pedicled Latissimus Dorsi Myocutaneous Flap with Distally Positioned Skin Paddle
【著  者】Tsubasa Kojima, Hisashi Motomura*, Ayaka Nochi Deguchi, Shusaku Maeda, Songsu Kang (* 責任著者) 
【掲載URL】https://doi.org/10.1097/gox.0000000000006199

用語解説

※1 皮弁:皮膚、脂肪、筋肉、骨などを一塊に採取し、主に血管から栄養が供給される血流の良い組織のこと。

※2有茎皮弁:血管を切り離さずに栄養が供給される皮弁のこと。皮弁を移動できる範囲は限られている。

※3遊離皮弁:一度血管を切り離し、移植先の血管と血管吻合を行うことで栄養が供給される皮弁のこと。離れた部位から皮弁を採取して移植することができる。

※4 広背筋:脇から背中、腰にかけて広く存在する筋肉。脇から流入する胸背動脈により栄養が供給される。

研究内容に関する問い合わせ先

大阪公立大学大学院医学研究科形成外科学
病院講師 小島 空翔(こじま つばさ)
TEL:06-6645-3892
E-mail:z22080m[at]omu.ac.jp

※[at]を@に変更してください。

報道に関する問い合わせ先

大阪公立大学 広報課
担当:谷
TEL:06-6605-3411
E-mail:koho-list[at]ml.omu.ac.jp
※[at]を@に変更してください。

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