抗菌薬適正使用について

 抗菌薬の開発により多くの細菌感染症の治療が可能となりました。一方で、抗菌薬の使用は、薬剤耐性菌(Antimicrobial Resistance, AMR)の出現の原因ともなります。ペニシリンの開発から100年足らずで、AMRによる感染症が大きな問題となってきました。抗菌薬適正使用には、不必要な抗菌薬使用を避けることも含まれます。例えば、風邪やインフルエンザに対する抗菌薬使用のほとんどは不必要と考えられています。ご存知とは思いますが、風邪やインフルエンザの原因の多くは、細菌ではなくウイルスです。ウイルスには抗菌薬が効かないためです。風邪の多くは自然に治癒します。インフルエンザも自然治癒しますが、抗インフルエンザ薬という薬が使用されています。抗インフルエンザ薬は抗菌薬には含まれません。
 以前は、「念のため」「(ウイルス感染に引き続く)二次性の細菌感染症の予防や治療」という理由で、風邪にも抗菌薬が多く使用されてきました。近年は、抗菌薬適正使用の考え方が広く認知されつつあり、そのような不必要な抗菌薬の使用は減少していると考えられます。
 抗菌薬適正使用は、前述のように不必要な抗菌薬使用を減らすことはもちろんですが、必要な場合には正しく使用するということも重要となります。具体的には、適切な抗菌薬を選択し、適切な量を、適切な期間、適切な投与経路で使用することです。

  1. 適切な抗菌薬を選択する
     現在、約100種類の抗菌薬があります。系統別に分けると、大きく10程度に分けられます。抗菌薬は、それぞれ、スペクトル、選択毒性、移行性などの特性が異なりますので、それらの特性を考慮した使い分けが必要になります。
  2. 適切な量を投与する
     使用する場合には、中途半端な量とせず、必要・十分な投与量とします。PK/PDパラメーターを考慮した投与設計も重要です。
  3. 適切な期間投与する
     投与量と同様に、中途半端に投与すると再発や耐性菌出現の原因となります。今回のゲームでは十分に反映できませんでしたが、原因菌、感染部位、感染症の種類、基礎疾患の有無などによって、投与期間の目安があります。たとえば、黄色ブドウ球菌菌血症の場合には14日間といった推奨される治療期間があります。ただし、同じ菌血症でも、カテーテルの有無や基礎疾患などによって治療期間が変わってきます。菌陰性化後の投与期間が推奨されている場合もあります。
  4. 適切な投与経路で投与する
     主な投与経路は、経静脈的投与と経口投与(=内服)です。経静脈的投与では、ほぼ100%利用されることが期待できますが、経口の場合には、吸収などの過程があるため、生体内での利用効率(バイオアベイラビリティ)を考慮する必要があります。その他、局所的な投与(外用など)があります。

 今回のゲームでは、抗菌薬適正使用の最も基本となる1番目の項目「適切な抗菌薬を選択する」という部分を理解することを主な目的としました。

関連項目