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岡本太郎に重ねた、研究者として目指す姿

大阪大学の大学院に通っていた私は、通学の途中でいつも目にしていた太陽の塔が印象的でした。当時の経験は後の人生にとって重要で、とても感謝しているのですが、挫折し大学院を辞めてしまったこともあり、太陽の塔は苦い思い出と結びついてしまいました(笑)。

しかし、後にアメリカで暮らしている時に、岡本太郎先生についての本を読み、当時の自分の気持ちに共感する部分が多く、すごく好きになりました。

有名な言葉ですが、「芸術はきれいであってはならない」という言葉があります。彼の「きれい」とは、型にはまった時代に合わせたものを指しています。一方、「美しくあるべきだ」とも言っており、「きれい」は相対的な価値観であるのに対し、「美しい」というのは無条件で絶対的なものであると解釈されます。岡本太郎先生は、心を震わせるような、人々に衝撃を与えるものを「美しい」と捉えていました。

私自身、研究や論文に関しては、きれいでカッティングエッジな解析をしているものを目指すのではなく、岡本太郎先生が求めた「なんだこれは」と思わせるような、斬新なアイデアや成果を目指したいと思っています。トレンドに乗って一時的にウケが良くても、すぐに時代遅れになってしまうようなものではなく、オリジナリティに溢れた研究成果を残したいと願っています。

岡本太郎先生は50歳近くになってからスキーを始めたそうですが、周りから反対されながらも、挑戦精神を持って上級者コースに挑戦しました。ひっくり返っても、それでもやり続けた姿勢はとても素晴らしいと思います。

私には芸術的な才能はなく、作品の良し悪しもわかりませんが、岡本先生の作品にはオリジナリティがあり、それが独自性を持っていることはわかります。太陽の塔は苦い思い出を呼び起こすため、あまり好きではありませんが、彼の生き様は研究者として見習いたいと思います。岡本先生のような挑戦的な姿勢で、サイエンスに取り組んでいきたいと思います。

プロフィール

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医学研究科 特任講師
佐野 宗一

医学研究科 循環器内科学  特任講師。医学博士、2021年より現職。

同大学院生時代の2014年からボストン大学、2018年からバージニア大学にてKenneth Walsh博士に師事し、クローン性造血と心血管疾患の関連についての研究に従事。アメリカ国立衛生研究所よりのR01グラントを36歳という若さで獲得し、2019年からバージニア大学にてアシスタントプロフェッサーとして研究室を構え、Y染色体喪失に関する研究を開始。その成果が20227月、国際学術誌『Science』に掲載され大きな注目を集める。令和4年度大阪市医学会にて第一回鈴木衣子賞を受賞。

※所属は掲載当時

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