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興味のないことほどアクセスの機会を逃さない

私の専門は大きく言うと農学です。農学というのは総合学です。農産物生産の環境制御や肥料などについて知るには生物学だけでなく物理学や化学や工学、産業としての農業を扱うなら社会学や経済学のこともある程度は知っておく必要があります。
若い頃から多くの学会に参加したり、いろんな本を読んだりして知識や情報を得ていました。一時期は十数の学会に入っていたこともありました。

最近は、インターネットが発達してオンラインでのセミナーなども増え、情報を便利に取得できるようになりました。それもあって、できるだけ広い範囲をカバーしようとさらに意識しています。そんな中で実感するのは、自分にとって必要性のある知識や情報というのは、そんなに構えなくても自然とフォローできるということです。常に関心を持っているので、いつのまにか集まってくると思います。

一方、自分にとって興味のないことについては、そもそも接点が少ないので、意識して機会を逃さないようにしなければ手に入りません。興味や関心がないというのは、その時点だけのことであって、将来、どこでどうつながるかはわかりません。好きなことだけに集中しないで、いろいろと首を突っ込んでおくと、何かの拍子に重要なカギとなったりすることもあります。

たとえば、植物と量子力学は、一見何の関係もないように思えます。でも、植物の光合成では植物が光を捉えて光合成のエネルギーとして使うので、光とは何かとか、光量子という光の粒子としての振る舞いといった量子力学の知識を把握しておくと、私が研究している植物工場の効率化につながってくるかもしれません。量子力学などの難しい話はできれば聞きたくないのですが、機会があれば聞くようにしたいと今は思っています。

また、いろんな知識だけでなく、いろんな人ともつながれる場を持つようにもしています。食料生産は単に「○○学」だけでは終わりません。いろんな人が集まって情報交換しながら社会実装を実現するのが、私がセンター長を務める植物工場研究センターのミッションでもあります。農学、工学、情報学、健康科学、社会学などさまざまな分野の研究者、食料生産に関わる農業者や企業などいろんな人に会って、広く、先入観を持たずに話を聞き、意見交換することを大切にしています。

北宅 義昭センター長 の他の記事はこちら。

アクアポニックス—自給自足システム実現への挑戦|おとなの教養02

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植物工場研究センター センター長 
北宅 善昭

植物工場研究センター センター長

2021年から植物工場研究センター長(2021年度は大阪府立大学、2022年度からは大阪公立大学)、研究推進機構 特任教授。主に、生物と環境との関係を物理学的な観点から解明する研究を基盤に、施設利用型・循環型農業生産システム構築や宇宙長期滞在支援のための食料生産・物質循環研究などに携わっている。

植物工場研究センター

※所属は掲載当時

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