人と直接会って話すことで得られる、知識やネットワークが大切
研究者が知識をどこから得ているのか。まずは論文です。私自身も興味のある論文を読むだけでなく、査読 (審査) したり、学術雑誌の編集に関わったりしているので、さまざまな論文を読みます。教科書も含めて、読んで知識を積み重ねることは大事です。
その上で特に大切にしているのが研究者と直接会って話せる機会、具体的にはシンポジウムや研究会、セミナーなどです。論文を一つ読むためにはそれなりに時間がかかりますが、シンポジウムなどでは一人あたりの発表時間が、10分から30分ぐらいまでに限られています。さらに発表者はそのプレゼンのために準備を重ねて、伝えたい内容を厳選して話をしてくれます。だから、その内容は極めて密度が高いのです。
発表する様子を生で見ていれば、その研究者の人となりも伝わってきます。そこで何か感じるところがあれば、発表後に話をするチャンスもあります。ポスターセッションも、話をするための絶好のチャンスです。少し厚かましいくらいでも構わないので、立ち止まってくれた相手には、最初の一言を自分から話しかけ、会話を通じて相手から質問を引き出します。自分には思いもつかなかった角度からの問いが、新たな考えを生み出してくれます。私自身は、研究者として駆け出しのころから、海外の学会に参加するだけでなく、研究室を訪問し、そこで出会える研究者の皆さんと話をさせてもらえるよう心がけていました。そんな交わりの中で、相手の何げないひと言から、次の研究のヒントを得られた経験はたくさんあります。
そういう私は決して話上手、人付き合い上手ではないのですが、だからこそ出向くのは大事だと思っています。研究者だけに限らず、若い皆さんもいろいろな人と直接会って、新たな知識を習得したりネットワークを作る機会を大切にして欲しいです。
農作物の収穫量を左右する栄養素 その吸収と感知のメカニズム
プロフィール
農学研究科 応用生物科学専攻 教授
博士(農学)。専門は、植物栄養学。1999年、東京大学農学部卒業、2004年、東京大学農学生命科学研究科博士課程修了、東京大学生物生産工学研究センター 日本学術振興会特別研究員。2007年、University of Wisconsin- Madison, Fellow of Human Frontier Science Program、2008年、北海道大学大学院農学研究院 助教、2016年、大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 教授を経て、2022年より現職。
研究者詳細
※所属は掲載当時