ファイナンス論の考え方を日常に取り入れる
私の専門は、金融機関論・ファイナンス・金融教育などです。ファイナンス論には「分散投資」「ドル・コスト平均法」という考え方があります。私はこの2つを、日常的に意識して取り入れています。
私は大学卒業後、民間企業での勤務を経て、AFP資格(注)を取得し、「金融リテラシーを普及させたい」という目標を持って大学院に入り直しました。修士・博士課程を修め、大学教員になって目標をかなえようと考えたのです。しかし、大学教員として就職するのはとても狭き門。そのため、税理士兼ファイナンシャル・プランナー(FP)として実務経験を積み、金融リテラシーの情報を発信していくという、もう1つのルートも考えて、大学院で研究活動をしながら税理士試験も受験しました。
これはファイナンス論で言うと「分散投資」、つまり投資先を分散させ、リスクを抑えて安定したリターンを目指す方法です。目的が何なのかを意識して、その目的を達成するための手段が他にないかを考える。そうやって別のルートを用意してリスク管理をしておくことは、精神的な安定をもたらすという意味でも非常に大切ですし、どちらも目標をかなえるための勉強ですから、モチベーションにもつながります。
もう1つ、ファイナンス用語で取り入れていたのは、価格が変動する商品に対して、常に一定額を定期的に購入する「ドル・コスト平均法」という投資手法です。私はこの考え方を応用し、大学院時代の勉強時間を管理していました。例えば、午前の2時間は簿記の勉強、午後の3時間は研究、と決めてしまって、その時間はとにかく集中するのです。
以前の私は、調子が良いときは何時間も続けて勉強して、次の日は「昨日頑張ったから今日はいいだろう」と休んでしまうこともありました。でも、「ドル・コスト平均法」を取り入れてからは、どんなに調子が良くても悪くても、決まった時間はとにかく机に向かって勉強することで、パフォーマンスがとても安定しました。
忙しい社会人の方は、日常生活の中で勉強時間を取るのがなかなか難しいのではないかと思います。でも、たとえ1時間でも30分でも、その時間だけは必ず勉強すると決めて続けていれば、長期的には大きなリターンにつながるのではないでしょうか。
(注)AFP資格:日本FP協会が認定する民間資格で、FPとして必要かつ十分な基礎知識を持ち、相談者に対して適切なアドバイスや提案ができるFP技能を習得した者に与えられる資格。
人生100年時代をより豊かに生きるために、身に付けておくべき金融リテラシーとは?
プロフィール
経営学研究科 グローバルビジネス専攻 准教授
博士(商学)。1999年神戸大学経営学部会計学科(夜間主コース)卒業。民間企業勤務を経て、2003年大阪市立大学(現大阪公立大学)大学院経営学研究科前期博士課程入学、2008年後期博士課程修了。2020年4月より現職。2013年4月より「金融経済教育を推進する研究会」研究委員、2018年4月より日本FP学会幹事を歴任。著書に『学生に読んで欲しいお金の攻略本 ―ゼミ生と考えた金融リテラシーのすゝめ』(2024年、パブファンセルフ)など。
※所属は掲載当時