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2022年9月6日

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第11回 東アジア包摂都市ネットワーク(EA-ICN)ワークショップ開催報告

 2022823日(火)から26日(金)の4日間にわたり、「第11回東アジア包摂都市ネットワーク(EA-ICN)ワークショップ分断都市・脆弱都市から多様性が尊重される包摂型レジリエント都市へ」が開催されました。

写真1. 重松所長による開会の挨拶(杉本キャンパス文化交流室)

 これまで旧市立大学都市研究プラザが中心となってきて実施されてきた本国際ワークショップは、日本、韓国、台湾、香港の研究者や現場ワーカーが参加し、東アジア都市が共通して直面している課題についての経験を共有するプラットフォームを築くことを目的にしています。今年からは都市科学・防災研究センターが主催となり、大阪市や八尾市などの後援のうえで行われました。

 また、本ワークショップは、大阪、香港、台北市、ソウル市の各都市を巡回して年1回行われており、今年度は2017年についで大阪にて会場を杉本キャンパス、八尾市、堺市、中百舌鳥キャンパスへと移し、各地で現地視察も行いながら、オンラインも用いて対面とハイブリッドで同時開催されました。


写真2. 1日目、いくのコーライブスパークでの現地視察。

 第1日目の午前は杉本キャンパスにて、都市科学・防災研究センターの重松孝昌所長からの歓迎挨拶にはじまり、「各都市における社会的弱者の現状と支援政策や実戦経験の理解と共有」、「災害に強い都市とレジリエンス」と題した二つのセッションが行われました。香港、台北市、ソウル市、大阪からのホームレスや居住支援などの報告があり、午後は大阪市生野区で現在開設準備中の「いくのコーライブスパーク」を現地視察し、廃校となった小学校を活用した多文化共生の地域交流拠点と防災拠点形成の事例報告が行われました。

 2日目は、会場を八尾市に移し、午前は「八尾市における継承語支援の試みや地域共生の取り組みを学ぶ」と題し、現地で行われているベトナムルーツの子どもを対象とした継承語教室の実践の報告と、地域内のフィールドワークが行われました。午後からのセッションは、「都市におけるダイバーシティと難民・移住者等外国籍住民との課題」と題し行われ、韓国での移住女性支援、浜松市でのフィリピン人女性支援の実践報告がありました。

写真3. 2日目セッションの様子。

 3日目の午前は堺市の泉北ニュータウンでの小学校跡地を活用したコミュニティスペースの設置運営などの現地視察のあと、午後は中百舌鳥キャンパスにて、「都市ネットワーク会議」と題したセッションが行われました。同セッションでは、台北市でのフードバンクの実践や、ソウル市城東区のデジタル格差から排除されないための実践の事例報告、浜松市と大阪市生野区の行政担当者からの「多文化共生」にむけた実践の報告がそれぞれありました。

 4日目は、共催団体である「包摂都市ネットワークジャパン」の傘下にあるインクルーシブシティ研究会第2回年次研究大会が行われ、日本、香港、台湾、ソウル市などの研究者と、都市科学・防災研究センターの若手研究員による居住支援や外国にルーツを持つ子ども、ヤングケアラーなどの研究発表が行われました。


写真4. 中百舌鳥キャンパスにてハイブリッド形式で開催された「都市ネットワーク会議」 本ワークショップは、海外ゲストも招き、全日程でのべ350人近い参加があり、いずれのセッションでも、報告に対しての国内外からの参加者、現場ワーカーからの質問が飛びかっていました。また、報告内容のほとんどは新型コロナウイルスの影響下において、東アジア各都市とその現場ワーカーや研究者がどう対処していったかが色濃く反映されたもので、これらの影響はいまもまだ各地に厳しくありますが、一方では、それに対して誰一人排除されないコミュニティの実現を目指す現場ワーカーが国籍や民族を問わず存在することと、都市のレジリエンス(復元力)が力強いことをあらためて知ることができた密度の濃い4日間となりました。また、都市科学・防災研究センターとなってはじめてのワークショップでしたが、これまで以上に各都市間との連携と経験の共有を密にはかるべく、非常に大きな手応えを感じた4日間でもありました。