大学院生の募集

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1. 何を研究しているか

 昼と夜は一日に一回そして,季節は一年に一回巡ってきます.この昼夜の変化,季節の変化に伴って温度や湿度といった非生物学的な環境要因,そして生物学的な環境も変動します.変動する環境を生き延びて遺伝子を残すため,地球上のほとんどの生物はこれらの変化にうまく対応しています.では,どのようなしくみで行っているのでしょうか.
 私たちは,動物が日周変動,季節変動に対応しているしくみを,個体・細胞・遺伝子のさまざまなレベルで解析し,その全体像を明らかにしようとしています.研究対象とする動物は主にハエ,カメムシ,ハチなどの昆虫を中心としていますが,甲殻類のアジアカブトエビや軟体動物のチャコウラナメクジ,蛛形類のナミハダニも対象として比較生理学的に解析しています.なお,私たちの研究内容を知るには,下記の出版物が参考になります.

○「環境Eco選書9 昆虫の時計―分子から野外まで-」(沼田英治編) 北隆館
○「生物時計の生態学―リズムを刻む生物の世界」(種生物学会編) 文一総合出版

2. 「動物の環境適応機構の解明」に向けて

 「動物の環境適応機構の解明」という目的にむかって,研究および大学院教育にあたっています. 研究および大学院教育においては,実験を実施した学生が,自分の手で,「原著論文」を発表すること,に重きを置いています.世界に向けて発表し世界の人に影響を与えてこそ,研究の意義が生まれます.また世界に向けての発表を「自分自身の手」で行なうことが大切です.学生が科学論文を執筆し,その名前を科学の歴史に刻むことを応援しています.

教授  後藤慎介 北海道大学大学院地球環境科学研究科修了 動物生理学分野
准教授 渕側太郎 京都大学大学院理学研究科修了 行動生理生態学分野

3. さまざまな方面に優れた研究者が巣立っています

 本研究室は,これまでさまざまな興味をもった多数の大学院生を受け入れ,国公立研究機関・教員・企業の研究職など幅広い分野に輩出してきました.当研究分野の前期博士課程修了者の近年の就職先は小林製薬,近畿大学附属高校,日本総研,アイテック阪急阪神株式会社,伊藤ハム株式会社,日立システムズパワーサービス,宇部エクシモ株式会社,京セラコミュニケーションシステム株式会社,東洋ビルメンテナンス株式会社,ブレーンバンク株式会社,仁川学院高等学校,モリ工業株式会社,月島食品工業株式会社,伊賀屋食品工業株式会社,株式会社林一二,昭和産業株式会社,富士通エフ・アイ・ピー,関電システムソリューションズ株式会社,マイクロニクス株式会社,オリンパス株式会社,アース環境サービス株式会社,OATアグリオ株式会社,ピアス株式会社,アース製薬株式会社,奈良県庁,株式会社ワークスアプリケーションズ,キユーピー株式会社,KISCO株式会社,株式会社ニッスイ,佐鳴予備校,日本インサイトテクノロジー株式会社などです.また,後期博士課程修了者は,大学・公的研究機関では大阪大学,芦屋大学,京都大学,大阪医科薬科大学,産業総合研究所,水産研究・教育機構,琉球大学,酪農学園大学,摂南大学,オハイオ州立大学で,民間では株式会社ビケンバイオミクス,株式会社野生動物保護管理事務所,日本システム株式会社で活躍中です.

4. 全国の大学から入学した先輩がいます

 これまで全国の国公私立大学の理学部をはじめとする,さまざまな学部の出身者が入学しています.当研究分野には,これまでに大阪市立大学理学部,和歌山大学教育学部,宮崎大学農学部,日本大学生物資源科学部,近畿大学生物理工学部,岡山理科大学理学部,京都工芸繊維大学繊維学部,神戸大学農学部,関西大学化学生命工学部,大阪教育大学教育学部からの入学者がいます.

5. 入学試験は決して難しくありません

 前期博士課程の推薦入学特別選抜の入学試験は7月頃に行われます.一般選抜の入学試験は8月頃および2月頃に実施されます.TOEIC L&RまたはTOEFL-iBTいずれかのスコア証明書の原本を出願時に提出する必要があります.これに加えて,専門分野の筆答試験と口述試験が行われます.筆答試験では,生物学の基本的な知識と考え方が要求されます.特定の分野の専門家だけにしかわからないような専門的な知識は要求されません.

 後期博士課程の入学試験では,本人の研究成果の発表及び関連する専門的事項に関する口述試験が行われます.

6. 最近の研究課題

 過去3年間の博士論文,修士論文の課題は以下のとおりです.

2023年度

博士論文

Physiological mechanisms underlying environmental adaptation in the Antarctic midge Belgica antarctica (ナンキョクユスリカの環境適応機構の生理学的研究)

・Physiological study of maternal induction of diapause in the band-legged ground cricket Dianemobius nigrofasciatus
(マダラスズの母性休眠誘導の生理学的研究)

修士論文

・カメムシ亜目昆虫の幼若ホルモンの生合成経路に関する生理学的研究Physiological study of juvenile hormone III skipped bisepoxide biosynthetic pathway in a true bug)

キョウソヤドリコバチの母性休眠誘導における幼若ホルモン合成制御と分解に関する研究(Physiological study of juvenile hormone biosynthetic regulation and juvenile hormone degradation in maternal regulation of diapause in the jewel wasp Nasonia vitripennis

・ナミニクバエの光周性におけるグルタミン酸シグナル伝達の役割(Roles of the glutamate signaling in the photoperiodic responses in the fresh fly)

・概日時計遺伝子ノックアウトマングローブスズを用いた概潮汐時計の分子機構の推定(Molecular dissection of the circatidal clock using a circadian clock mutant in the mangrove cricket)

・トゲオオハリアリの脳における神経ペプチドPDFおよびsNPFの分布 (Distribution of neuropeptides PDF and sNPF in the brain of Diacamma ant)

2022年度

博士論文

・Molecular study of the linkage between the circadian clock and the endocrine pathways in the photoperiodic response of the bean bug, Riptortus pedestris (ホソヘリカメムシ光周反応における内分泌系と概日時計の機能的関連に関する分子生物学的解析)

修士論文

・Changes in circadian rhythms associated with social division of labor, and the expression of sNPF, a candidate peptide for circadian clock output, in the honeybee, Apis mellifera (セイヨウミツバチの社会的分業に伴い概日リズムの変化と概日時計出力候補ペプチドsNPFの発現)

・Diel changes of the distribution pattern of circadian output factor PDF in the brain of the honey bee Apis mellifera (セイヨウミツバチの脳における概日出力因子PDF分布パターンの日周変化)

・Diversity and evolution of juvenile hormones in Hemiptera (カメムシ目昆虫における幼若ホルモンの多様性と進化)

・Physiological mechanisms underlying locomotor activity rhythms in the terrestrial slug Ambigolimax valentianus (チャコウラナメクジの歩行活動リズムを制御する生理機構の解析)

2021年度

修士論文

・Physiological mechanisms underlying latitudinal differences in the photoperiodic induction of diapause in a flesh fly (ニクバエの光周休眠誘導の緯度による違いを生み出す生理機構)

・ゲノムデータベースを用いた昆虫概日時計遺伝子セットの進化系統解析 (Phylogenetic analysis of insect circadian clock gene sets using genome databases)

 

7. これまでの博士号取得者(2004.3以降,含・大阪市立大学時代)

2024.3

 清水 悠太 Physiological study of maternal induction of diapause in the band-legged ground cricket Dianemobius nigrofasciatus (マダラスズの母性休眠誘導の生理学的研究)

2023.9

 吉田 美月 Physiological mechanisms underlying environmental adaptation in the Antarctic midge Belgica antarctica(ナンキョクユスリカの環境適応機構の生理学的研究)

2022.12

 間野 玄雄 Molecular study of the linkage between the circadian clock and the endocrine pathways in the photoperiodic response of the bean bug, Riptortus pedestris (ホソヘリカメムシ光周反応における内分泌系と概日時計の機能的関連に関する分子生物学的解析)

2019.3

 向井 歩 Molecular dissection of the photoperiodic and maternal induction of diapause in the jewel wasp, Nasonia vitripennis (キョウソヤドリコバチ休眠の光周誘導および母性誘導の分子生物学的解析)

2018.3

 河崎 裕太 Chronobiological study of circa'bi'dian rhythms in the large black chafer Holotrichia parallela

2017.3

  西吉利 Morphological study of afferent neural pathways in the photoperiodic response of the bean bug, Riptortus pedestris

2016.3

  松本 圭司 Analysis of neuroendocrine mechanisms underlying photoperiodic responses in the brown-winged green bug Plautia stali

2014.3

  武方 宏樹 Molecular and neurobiological analyses of the circatidal clock mechanism in the mangrove cricket Apteronemobius asahinai 

2013.6

 関澤 彩眞 Mating behavior and sexual selection in a simultaneously hermaphroditic nudibranch, Chromodoris reticulata

2011.9

 池野 知子 Photoperiodic response under the control of circadian clock genes in the bean bug Riptortus pedestris

2009.3

 森山 実 Ecophysiological study in the embryo and first-instar nymph of the cicada, Cryptotympana facialis with reference to climate change

2008.9

 伊藤 千紘 Peripheral circadian clock controlling the cuticle deposition rhythm in Drosophila melanogaster

2008.3

 宇高 寛子 Experimental analysis of seasonal adaptations in the terrestrial slug, Lehmannia valentiana

2007.3

 宮﨑 洋祐 Phase responses in the circannual rhythm of Anthrenus verbasci

2005.3

 浜中 良隆 Morphology and physiology of neurons controlling diapause in the blow fly, Protophormia terraenovae

2004.3

 橘 真一郎 Environmental control of larval diapause in the blow fly Lucilia sericata

8. 問い合わせ

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後藤 慎介: shingoto@omu.ac.jp
渕側 太郎: tfuchi@omu.ac.jp