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獣医国際防疫学教室について

20世紀も終わりにさしかかった頃、新興・再興感染症という言葉が生まれました。今までに報告されていなかった腸管出血性大腸菌O157、ライム病ボレリア、ニパウイルスや牛海綿状脳症などの病原体が次から次へと見つかり、一旦は制圧されたと思われていた結核、サルモネラ、マラリアなどが再び猛威を振るい始めました。これら新興・再興感染症のほとんどは、動物由来の感染症です。熱帯・亜熱帯地方では、コレラ、チフス、デング熱、マラリア、トリパノソーマなどの感染症によって多くのヒトの命が今も失われています。二酸化炭素濃度の上昇による、地球温暖化も大きな社会問題となってきています。日本もいつ亜熱帯性の気候になり、これらの病原体が侵入し、定着するかもしれません。現在も、航空機を介して、ヒト、動物や食物によって世界中の感染症が我が国に持ち込まれる可能性を秘めています。
 21世紀に入り、食の安全がより一層求められるようになりました。安心して食べられる、牛肉、豚肉、鶏肉等が供給されること、これらも獣医学領域における重要な課題です。昨今、SARS、鶏インフルエンザなど人獣共通感染症が大きな社会問題となってきています。感染症、家畜防疫・公衆衛生領域で活躍する獣医師及び研究者の役割は益々重要となってきています。

 獣医国際防疫学教室では、予防獣医学の観点から、海外から侵入の恐れのある新興・再興感染症の原因となる病原微生物の分子疫学的解析、病原因子や病態発症機序を分子、細胞、個体レベルで解析し、より簡便で迅速な診断法や、新たな治療法や予防法の開発に関する研究を行っています。

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