片岡道彦 教授(研究内容)

(1)立体選択的酵素反応を利用したキラル化合物生産(バイオコンバージョン)

微生物酵素のもつ極めて優れた特徴のひとつである立体選択性を利用した、有用光学活性化合物(アミノ酸・ビタミン類等)生産法の開発を行っている。例として、酸化還元酵素によるカルボニル基の不斉還元を用いる、様々なキラルビルディングブロックの生産に成功している。また、不斉加水分解酵素を用いて、パントテン酸の合成中間原料であるパントラクトンの光学分割にも成功している。さらに、これらの反応を触媒する酵素についても精製・単離を行い、立体選択的反応機構等の酵素化学的研究・タンパク質化学的研究も行っている。

PL1

パントラクトン(PL)の酵素分割法の比較
(左)従来法 (右)ラクトナーゼを用いた酵素法

hbe006片岡道彦、喜多恵子、清水 昌:組換え大腸菌を利用した光学活性化合物の生産プロセス. 化学と生物, 38 (5), 313-318 (2000)

hbe006Kataoka, M., K. Kita, M. Wada, Y. Yasohara, J. Hasagawa, S. Shimizu. Novel bioreduction system for the production of chiral alcohols. Appl. Microbiol. Biotechnol., 62 (5-6), 437-445 (2003)

hbe006Horita, S., M. Kataoka, N. Kitamura, T. Nakagawa, T. Miyakawa, J. Ohtsuka, K. Nagata, S. Shimizu, M. Tanokura: An engineered old yellow enzyme that enables efficient synthesis of (4R,6R)-actinol in a one-pot reduction system. ChemBioChem, 16, 440–445 (2015)

hbe006Kataoka, M., T. Miyakawa, S. Shimizu, M. Tanokura: Enzymes useful for chiral compound synthesis: structural biology, directed evolution, and protein engineering for industrial use. Appl. Microbiol. Biotechnol., 100, 5747-5757 (2016)


(2)人工生合成経路構築による化学品の発酵生産(バイオリファイナリー)

本来、微生物が生産できない化合物を発酵生産させるために、遺伝子組換え技術により人工生合成経路を組み込んだ微生物を構築することで成し遂げようとしている。例えば、石油由来のポリマー原料であるプロピレンを生産するため、その前駆体であるプロパノールの発酵生産に取り組んでいる。脱石油社会に向けた取り組みのひとつである。

Biopropanol

hbe006松原 充、片岡道彦:バイオマスからのポリプロピレン生産を目指して. プラスチックス, 2015.11, 6-9 (2015)

hbe006Urano, N., M. Fujii, A. Kaino, M. Matsubara, M. Kataoka: Fermentative production of 1-propanol from sugars using wild-type and recombinant Shimwellia blattae. Appl. Micriobiol. Biotechnol., 99, 2001-2008 (2015)

hbe006Matsubara, M., N. Urano, S. Yamada, A. Narutaki, M. Fujii, M. Kataoka: Fermentative production of 1-propanol from D-glucose, L-rhamnose and glycerol using recombinant Escherichia coli. J. Biosci. Bioeng., 122, 421-426 (2016)