三浦夏子 准教授(研究内容)

酵素集合体META bodyの制御・評価とスマートセル・創薬への応用、海洋細菌のスクリーニングと生分解性プラスチックへの展開、サンゴ礁の保全に向けたサンゴ共生菌の探索、環境DNAから有用遺伝子の探索を行っています。本学・他大学からの大学院進学を歓迎します。気になる点などありましたらお気軽にご連絡ください。
メールアドレス:miura.natsuko[at]biochem.osakafu-u.ac.jp ([at]を@に変えてください)

・世界初の報告「G-body(低酸素下で集合体をつくる酵素の現象)」で ものづくりから創薬まで、新しい道筋をつくる。

・絶滅に瀕したサンゴを救う 「病原菌からサンゴを守る善玉菌」を海水から容易に取得可能に!

主に以下に挙げる二つの研究を行っています。


1.低酸素条件下で集合する代謝酵素群に関する研究
【背景】
2013年に、低酸素条件下で解糖系を含む20以上の代謝酵素が酵母細胞内で集合し、糖代謝のターンオーバーを上昇させることを世界で初めて見出しました。この集合体は2017年に、アメリカの研究グループにより“Glycolytic body (G-body)”と名付けられました。G-body形成は酵母だけの現象ではなく、この集合体が複数のヒトがん細胞株でも見られることを確認済みです。近年ではプリン合成系の酵素群など、より多くのタンパク質が低酸素条件下で集合することが明らかになりつつあります。我々は、こうした低酸素条件下でみられるタンパク質の集合体を包括して“META body”と名付け、多様な生物種におけるMETA bodyの役割解明と制御・利用に向けて研究しています。

【我々の研究グループでできること】
1-1. 140 μL~300 mL までの多様なスケールで、任意の酸素濃度を維持しながら微生物の低酸素培養を行うことができます。

1-2. 酵素の集合体形成に関わる25-40アミノ酸からなるシグナルペプチド配列群(一部未公表)を保有しています。この配列を使って、大腸菌・酵母・ヒト培養細胞内で人為的に任意のタンパク質を集合体として精製することができます。
特願2019-144652:タグペプチド(公立大学法人大阪)

遺伝子導入による強制発現系では低酸素条件は必須ではありません。目的とするタンパク質の精製にも活用できます。スマートセルの分野でも利用可能です。

1-3. 酵母およびヒト培養細胞内において、低酸素条件下で形成される酵素集合体の形成割合を判定できます。下記論文のようにエノラーゼとGFPの融合蛋白を集合体形成の指標にできます。

1-4. 上記の手法を統合し、細胞内の集合体形成を制御できる化合物スクリーニングを行うことが可能です。酵素の細胞内局在の変化をデジタル処理して定量化することで、神経変性疾患やがん、虚血による組織障害など低酸素状態で起こる各種疾患を標的とする新規創薬ターゲットの探索、あるいは新規治療薬候補物質の探索が可能です。

【論文】
hbe006Spatial reorganization of Saccharomyces cerevisiae enolase to alter carbon metabolism under hypoxia

hbe006Small-scale hypoxic cultures for monitoring the spatial reorganization of glycolytic enzymes in Saccharomyces cerevisiae

hbe006Tracing putative trafficking of the glycolytic enzyme enolase via SNARE-driven unconventional secretion

【解説】
hbe006解糖系酵素の局在制御とリンクした代謝制御


2.海洋細菌の培養・評価
【背景】
2017年より、造礁サンゴの一種であるアザミサンゴに共在する微生物を採取し、スクリーニングを行うことで、Vibrio属細菌に対して生育阻止活性をもつ微生物を単離しました。また、2019年より大阪湾において、生分解性プラスチック分解能を持つ微生物のスクリーニングを行い、生分解性プラスチックを唯一の炭素源として増殖できる微生物を単離しました。

【我々の研究グループでできること】

2-1. 環境DNAを海水から採取し、細菌叢の解析を行うことができます。有用遺伝子の探索や環境アセスメントに利用できます。Vibrio属細菌に対して生育阻止活性をもつ微生物の単離は、絶滅に瀕したサンゴの保護を実現するための基礎技術となるとともに、プロバイオティクスとしての利用価値も期待されます。

2-2. 海水等から取得した海洋細菌ライブラリを保有しています。単離した生分解性プラスチック分解能を持つ微生物は、プラスチックの分解機序の解析や分解酵素の同定とその利用への応用が期待されます。

2-3. 分離共培養により、二種の異なる細菌間相互作用を調べることができます。

【論文】
hbe006Ruegeria sp. strains isolated from the reef-building coral Galaxea fascicularis inhibit growth of the temperature-dependent pathogen Vibrio coralliilyticus

hbe006Specific detection of coral-associated Ruegeria, a potential probiotic bacterium, in corals and subtropical seawater

hbe006Design of novel primer sets for easy detection of Ruegeria species from seawater

【解説】

hbe006サンゴと生きる微生物