マテリアル工学科について

マテリアル工学とは

マテリアル工学 とは、物理や化学を始めとする様々な分野の知識を融合して新しいモノ、すなわち「マテリアル」を創り出す学問です。
新しいマテリアルを創り出すには、マイクロメートルスケールの結晶組織や、原子スケールでの構造や電子の運動など、ミクロな視点で物質の本質的な性質を理解し、それを機能として利用できるように制御する必要があります。マテリアル工学科では最先端の合成技術や解析技術を駆使し、無機結晶材料、有機-無機ハイブリッド材料、金属材料など、持続可能社会の構築に欠かせない、さまざまなマテリアルの開発に取り組んでいます。例えば、人工歯・骨に求められる人体に害のない素材、軽くてしなやかで丈夫な合金、再生可能エネルギーを有効利用するための触媒、鉛などの有害な元素を鉄などの環境にやさしい元素に置き換えた材料の開発など、研究分野は多岐に渡ります。マテリアル工学科では、モノの仕組みを理解するための物理、モノを設計するための化学、モノの状態を制御するための材料プロセス学など、新しいマテリアルを創るための学問を体系的に学び、柔軟な思考力と課題への解決力を養うことで、あらゆる分野で活躍できる「マテリアルのプロフェッショナル」を育成しています。

学科紹介動画

学科の沿革

マテリアル工学課程・マテリアル工学分野のルーツは大阪工業専門学校(大工専)(前身は大阪高等工業学校)と大阪府立化学工業専門学校(化工専)(前身は堺高等工業学校)を母体として昭和24年4月の「浪速大学」(昭和30年「大阪府立大学」に改称)の設立と同時に生まれた「金属工学部門」に遡ります。開設当初は、金属組織学・金属加工学・金属材料学・冶金学・金属化学の5講座編成で発足しました。昭和27年に「金属工学部門」から「金属工学科」に呼称変更となりました。


旧工学部木造校舎の全景
(左)旧工学部2号館の外観と(右)旧工学部2号館屋上から中百舌鳥門を臨む風景

昭和40年4月に鉄鋼材料学(第6講座)が開設され、時代の趨勢に応じて、わずか3年後の昭和43年4月にはさらに結晶塑性学(第7講座)が新設されました。その後、7講座としての金属工学科は平成8年3月まで長きに渡って続くことになります。

昭和47年7月12日に金属工学科同窓会が発足され、昭和49年には金属工学科同窓会誌である「めたる」が創刊されました。創刊の辞によりますと、「金属同窓生の発巣立ち(同窓会の設立に尽力された大工専の前身である大阪高等工業学校の1期生の卒業式)は昭和16年12月末日で、第2次世界大戦に突入した月であった」と記載されています。政治、教育、経済をはじめ日常生活に至るまでの大変な激動と変革があった時代の中でも金属工学科の伝統は脈々と受け継がれました。


「めたる」創刊号の表紙

平成5年4月に、材料物性学、材料加工学、高温材料学、トライボ材料学、組織制御学、材料強度学の6講座編成となり材料工学科と名称を変更しました。

平成17年4月に、機能材料物性、マテリアル設計最適化、セラミックスプロセス、生体材料、ナノ・メゾ組織制御、構造評価、表面化学、照射場マテリアル科学、先進構造材料学の9講座編成となり、マテリアル工学科という名称の材料に関連した幅広い学問領域を教育・研究する大教室となりました。

平成24年4月に、学域制導入に伴いマテリアル工学課程と名称変更しました(当時の研究グループ名:マテリアル設計最適化、ナノテク基盤材料、生体材料、構造評価、表面化学、照射場マテリアル科学、社会基盤材料、量子線材料科学)。金属材料に加えて複合材料、無機材料までの多様な「マテリアル」を扱う課程となり、材料物性学、材料化学、材料工学の3研究領域を柱とした教育・研究活動がおこなわれてきました。


現在の中百舌鳥キャンパス全景

令和4年4月の大阪公立大学の誕生とともに、大都市大阪を牽引する新大学・大阪公立大学のマテリアル工学科となります。10研究グループ編成(信頼性材料、ナノテク基盤材料、生体材料、材料構造物性、電子機能材料、社会基盤材料、材料プロセス制御、先端素形材・ものづくり、複合ナノ材料、計算材料科学)で多様な学問分野を扱う学科として始動しました。「マテリアル」の原子レベルの「ミクロ」から構造物のような「マクロ」なスケールまでの現象を、合成・評価・加工・応用に渡る様々なステージできちんと理解し、社会に貢献すること、ならびに、これらを担う次世代の人材の育成を目指しています。