文科省新学術領域「重力波天体」A03
計画研究A03 「超新星爆発によるニュートリノ信号と重力波信号の相関の研究 」
研究課題名 超新星爆発によるニュートリノ信号と重力波信号の相関の研究 研究代表 東京大学・カブリ数物連携宇宙研究機構・特任教授 ヴァギンズ マーク
研究分担者 東京大学・助教 小汐由介 連携研究者 東京大学・教授 中畑雅行 岡山大学・教授 作田 誠 神戸大学・教授 竹内康雄 岡山大学・准教授 石野宏和 東京大学・准教授 岸本康宏 東京大学・助教 関谷洋之
研究目的
星の一生の最後に、その中心部での重力崩壊により起こる超新星爆発は、宇宙で起こる最も劇的で重要な現象の一つである。その現象は凄まじい破壊を引き起こすにもかかわらず、ヘリウムより重い元素の唯一の源として、生命の存在にとって欠くべからざるものである。それゆえに、超新星爆発現象を理解することは、我々がなぜここにいるのか、我々の世界や宇宙はなぜ現在の姿であるのかを理解するために必要である。いくつかの超新星爆発からの信号のうち、重力波とニュートリノのみが、いかなる宇宙の塵やガスに遮られること無く、地球にまで到達する。それらはまた、星の崩壊そのものの初期段階における唯一の放射でもある。それゆえに、まさに爆発している星の内部を見るためには、重力波とニュートリノの情報を融合することが必要となってくる。我々はそれらの信号が到達したときに、受信し、関連づけられるよう準備を進めている。
超新星 SN1987A
研究内容
我々は、次に我々の銀河系のどこで超新星爆発が起こっても、できる限り多くの情報を引き出すことができるようニュートリノ観測装置の能力を高め、その準備を行なう。特に、新しい重力波検出器における最初の観測フェーズで実証されうる感度をカバーするために、神岡鉱山内に現存する調査開発実験のための装置(元々は水チェレンコフ検出器にガドリニウムを溶解するテストのために設計された)を世界で最も先進的な超新星爆発観測装置に改良する。本装置は、リアルタイムで観測を行うことができ、さらに、ナノ秒の時間精度で超新星爆発を識別できる。2015年までに準備完了の予定であることから、重力波検出器の初期のフェーズと同期した観測が可能である。また、このタイプの検出器としてはそれほど大きくない200トンというサイズは、極近傍で起こる超新星爆発による全事象を完全に記録できるサイズとして適している。
地下の研究開発設備
期待される研究成果とその意義
次に銀河系内で超新星爆発が起これば、前例のない科学的な研究の機会を与える。現在、KAGRA のような、目に見えない遠くからの重力波信号を捕えるプロジェクトの開発が進行しており、近い将来、超新星爆発における重力波の放出と、ニュートリノや電磁波の放出との相関を観測することが可能になる。それにより、超新星爆発における中心部の重力崩壊の完全な描像を初めて与えることが期待される
キーワード
ニュートリノ:素粒子の一種。非常に小さいが、ゼロではない質量を持ち、電荷は持たない。3種類の間で自然に、かつ、絶えず振動を起こす。
重力崩壊型超新星爆発:大質量星の一生の最後に起こす大爆発。極端に明るい天体で、しばしば銀河全体よりも強い光を出す。放出するエネルギーの99%以上をニュートリノにより解放される。