文科省新学術領域「重力波天体」A05

計画研究A05「重力波天体の多様な観測に向けた理論的研究」

研究課題名 重力波天体の多様な観測に向けた理論的研究
研究代表  京都大学・基礎物理学研究所・教授 田中貴浩
                            

tanaka

分担者
 中村卓史  京都大学大学院理学研究科
    Takashi Nakamura
 山田章一  早稲田大学先進理工学部
    Shoichi Yamada
 瀬戸直樹  京都大学大学院理学研究科
    Naoki Seto
 井岡邦仁  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所
    Kunihito Ioka

連携研究者		
 川崎雅裕  京大学宇宙線研究所
    Masahiro Kawasaki
 横山順一  東京大学大学院理学系研究科
    Jun’ichi Yokoyama
 柴田大	   京都大学基礎物理学研究所
    Masaru Shibata
 固武慶	   国立天文台理論研究部
    Kei Kotake
                            

本計画研究の目的

「最先端研究基盤事業」に選定された「宇宙線研究所の大型低温重力波望遠鏡 (KAGRA)計画」は2015年にiKAGURAとしての初期観測を目指している。また米欧 のLIGO, Virgoも2016年には改善された感度(=距離9億光年での連星中性子星の 合体を検出可能)に達する予定である。重力波が検出されれば、
(I) 強い重力場での一般相対性理論の確認。
(II) 修正重力理論の検証。
(III) 超高密度物質の物性。
(IV) ガンマ線バースト現象の解明。
(V) 超新星爆発機構の解明
等の理論的にも未解決 な物理学・天文学に関する重要な成果が期待される。さらに、予想もしない現象 が重力波で発見されれば全く新しい物理学のフロティアが開け、人類が未知の領 域に入る。上記の成果を出すために理論家の果たす役割は今まで以上に重要であ る。そのため、 既存の重力波源の詳しい理論的研究に加え、全く新しい重力波源の追求を、以下 の4つの柱の下に組織的に進める:
(1)電磁波等による同時観測の可能性の探究: 様々な重力波源に対して、重力波と同時に放出される電磁波やニュートリノの性質を明らかにする。
(2)データ解析との連携: 同時観測に対応できる迅速なデータ解析法を確立する。また、理論の新しい進展を反映させたデータ解析法を提案する。
(3)広い視野での重力波関連研究全般の推進:広い分野をカバーする重力波に関する理論的研究の研究ネットワークを組織し強化する。
(4)若手研究者の育成:重力波の研究の将来を見据え研究者の育成を組織的に行う。 研究成果の公表については、計画研究のホームページを作成し、わかりやすく研究の進展を記事にする。また、領域全体で企画する市民講演会等で、成果を発信する。

A05-1

本計画研究の組織

研究代表者が全体を統括した上で、以下のように役割を分担し、担当者を中心にプロジェクト的に取り組む。
a) 様々な重力波源の探査と重力波波形の解明(担当:中村): 重力波検出には波形の理論予測が不可欠である。近年の数値相対論の進展等を取り入れ、データ解析に使える波形予測等を行う。
b) 超新星爆発の物理(担当:山田): 超新星爆発のメカニズムの理解は、様々な不安定性の発見で急速に進展し、重力波物理における重要性が増している。また、予想されるニュートリノの光度曲線も求める。
c) 電磁波等との同時観測から得られる物理 (担当:井岡) :まずは考えられる重力波源の中で電磁波やニュートリノの同時観測の可能性を網羅的に吟味し放射の強度やスペクトルの時間変化等を明らかにする。計画研究A01-03との連携が重要となる。
d) 新しい重力波観測・データ解析法の提案(担当:瀬戸):計画研究A04とも連携し、電磁波等での同時観測に向けた迅速な解析手法の開発を目指す
e) 宇宙論・修正重力理論の観点からの重力波研究(担当:田中): 超弦理論等の物理の基本法則の理解の進展に対して重力波観測が果たせる可能性を明らかにする。
上のプロジェクトに加えて、広い視野での重力波関連研究全般を推進するために、
(I) 公募研究、
(II) 幅広い分野の人を集めた形の研究会、
(III) 全国規模の定例のテレビ会議等を利用する。