「ひろがり」プロジェクト 最終段階へ!
超小型衛星機「ひろがり」を2021年2月「きぼう」から放出予定に向けて機体も完成し、
安全審査試験がいよいよ最終段階に!
その意気込みを学生さんがレポートにまとめてくれました。
“ひろがり“プロジェクトPMの青島猛弘です。
先月にFM振動試験が完了しました。これをもって人工衛星“ひろがり“に対しての試験は全て完了しました。ここまでには多くの困難がありました。
今年度の“ひろがり“の作業は、大きなものが3つ残っていました。
1つ目が、太陽電池・ミッション部・無線機・アンテナなど全てのコンポーネントを組み上げる、衛星組立。2つ目が、衛星システムを全て統合した環境で、ミッションサクセスまでの全ての運用を実行可能であることを検証するエンドツーエンド試験。3つ目が、衛星が打ち上げの振動環境に耐えられることを検証する振動試験です。これらの作業を今年度8月初旬までに完了させなければなりませんでした。
厳しいスケジュールの中で、最初の難関が新型コロナウイルス感染症の流行でした。感染者が急激に増えていく状況で、4~5月中、大学内での活動ができなくなりました。残っていた作業が衛星を実際に用いなければならない開発ばかりでしたので、多くの作業がストップしてしまいました。そのような状況で6月からスムーズに作業が進めるよう、手順書の作成や感染症対策の準備など、できる限りの作業をオンラインで進めました。
6月以降、衛星を用いる開発がリスタートしてからも多くの問題が発生しました。そのなかの一つが、衛星構体がフィットチェックケースに入らないという問題です。衛星構体には0.1mm以下の寸法要求があります。これは、若干の寸法公差やネジを締める順番を少し変えるだけで逸脱してしまいます。この問題を解決するために、急ピッチでの構体の再製造、詳細な組み立て手順書の検討を行いました。今回は以上のような対応をしましたが、もっと根本的にこの問題を解決するには、余裕を持った設計をすることが重要だと思いました。次号機ではこの反省を継承し、今回の経験を生かした設計にしたいと思います。
このような状況で、最後の試験まで完了できたのは、プロジェクトメンバーみんなの努力はもちろんですが、それだけでなく大学教員・事務員の皆様、室蘭工業大学の皆様、生産技術センターの皆様、IMV株式会社の皆様、JAXAの皆様、株式会社中金の皆様、播磨機工株式会社の皆様などなど、挙げきれないほど多くの方々のご協力があって初めて達成できたと強く思います。皆様、本当にありがとうございました。
しかし、僕たちの衛星はまだ何も達成していません。打ち上げまでには安全審査フェーズ3、適合性確認審査などの審査があり、打ち上げ・放出後には様々な運用が待ち構えています。これらを全て達成して初めて、「“ひろがり“という衛星は成功した。」ということができます。真のミッションサクセスをし、ご支援いただいた皆様に「“ひろがり“という衛星は成功しました!」というご報告ができるよう、センター員一同、手を緩めずに開発を進めていきたいと思います。今後とも、ご支援ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!!
機械工学分野 M2 青島 猛弘
小型宇宙機システム研究センターの皆さま。今年度は特殊な状況でありますが、皆さんが様々な困難を乗り越え、「ひろがり」プロジェクトを成功されることを願っております。頑張ってください!