動物社会学研究会のご案内

2022年11月28日

  • 研究会(2022年度)

第1回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第1回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2022年12月3日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

プルチャーにおける共感能力の研究~雄は相手に応じて救援行動を変化させる~ 井上 瑞樹(M2)

共感とは他者の情動表出により起こる自己の情動反応である。これは他者との複雑な社会関係を維持するために重要な能力と考えられている。共感は霊長類以降に進化した能力とされてきたが、近年ではイヌやげっ歯類も共感を持つと報告されている。一方で、魚類においてヘルパーと協力し子育てを行う協同繁殖など複雑な社会が発見され、共感が進化し得る社会生活をしていることが分かってきた。本研究では高い認知能力で知られる協同繁殖種プルチャーを用い、オスが電気刺激を受ける他個体を救援するか検証した。その結果ペアメスに電気刺激を与えた場合、止め方を知っているオスは電気刺激を止めてペアメスを救援した。これはオスが電気刺激を受けて苦しむペアメスの負の情動を読み取った、すなわちオスがペアメスに共感したことを示唆する。ここで、オスがペアメスを救援した理由は大きく分けて二つ考えられる。一つはペアメスを救援するため、もう一つは苦しむ他者を見るというオス自身の苦痛を軽減するためである。その理由を解明するため、ペアメスではなく未知のオスを用い同様の実験を行ったところ、電気刺激の止め方を知っているオスも救援行動を示す頻度が著しく減少した。このことから、オスは苦しむ他者を見ることが不快であったためではなく、電気刺激を受け苦しむペアメスを救援するため電気刺激を止めたと考えられる。これは本種のオスがペアメスに同情し救援したことを示唆する。

魚類のあくび伝染 ―Neolamprologus pulcherの性別・親密度の異なるペアで比較― 岩田 祐典(M2)

大きく口をゆっくり開けて急速に口を閉じる動作である「あくび」は,魚類から哺乳類まで多くの脊椎動物で確認されている。他者のあくびを感知することであくびが伝染することも知られているが、ヒトやチンパンジーなど極めて限られた動物でしか伝染は確認されていない。あくびの伝染が確認されている動物は、社会性のある集団で暮らしていることが共通していることから、社会性とあくびの伝染には深い関係があると推測されている。脊椎動物の中で最も原始的と考えられる魚類の中にも,タンガニイカ湖産カワスズメ科魚類Neolamprologus pulcher(プルチャー)のように高い社会性を持つ種がいる。本種は,協同繁殖し、順位制が構築されることから、ヒトと同様にあくびの伝染と親密度に関係があると予測される。そこで,プルチャーにおけるあくびの伝染と親密度の関係を明らかにするために、これまで出会ったことのない雄ペア、水槽越しに1か月以上対面させた雄ペア、長期間同じ水槽で過ごした雌雄の繁殖ペアについてあくびの発生状況を調べた。隣接した水槽に1個体ずつ入れて対面させた結果、繁殖ペアでのみ、相手のあくびが見えている時は、その後3分以内にその個体があくびをする頻度が高かった。このことから、本種のあくびは伝染するが、その確率は個体間の親密度合いによって変化することが明らかになった。本研究は、魚類で社会性があくびの伝染に関係することを初めて示した研究となった。今後、社会性を持つ多くの魚類であくびの伝染が見つかる可能性があり、この現象は広く脊椎動物で共通しているかもしれない。

次回の研究会

次回研究会は12月10日(土) 13:00より、以下の内容で開催予定です。詳細及び要旨は12月5日に公開いたします。

生息場所の餌量の違いはテッポウエビとハゼの相利共生の繋がりの強さに影響を及ぼすのか? 7種の行動比較から
北口 あやの(M2)

都市緑地とそこに生息する鳥類相の長期的な変化 ―大阪における2000年と2022年の比較―
寺嶋 建(B4)

連絡先

安藤(研究会渉外担当) a19se001★st.osaka-cu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。