動物社会学研究会のご案内
2022年12月12日
- 研究会(2022年度)
第3回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第3回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2022年12月17日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
ハリヨの顔入れ替えモデルを用いた鏡像自己認知の検証 中野 翔太(B4)
鏡に映る自分を自分だと認識する鏡像自己認知(MSR)能力は自己意識を持つ指標であり、高等な脊椎動物のみにあるとされてきた。しかし近年魚類のホンソメワケベラでも確認された。MSRが確認された種の共通点は「高い社会性」であるとされているが本当に「高い社会性」が必要なのだろうか。本研究では刺激と反射のモデル生物として知られているイトヨ属のハリヨにおいて顔入れ替えモデルに対しての攻撃量の違いからMSRができるか検証した。本種は同種他個体に対して高い攻撃性を示すこと、縄張りを持ちDear Enemy関係の隣人を形成すること、顔による個体識別できることが判明している。本実験では実験個体と隣人個体と未知個体の顔入れ替えモデルを作成した。鏡を見た後に自分の顔モデル、隣人形成の後に隣人顔モデル、未知個体顔モデルそれぞれ提示し、3つのモデルに対する行動を5分間解析した。自分の顔モデルを自分だと認識していれば隣人や未知個体の攻撃量より少なく、未知個体と隣人個体の間にも差があるという予測ができる。その結果4個体全て自分の顔のモデルに対して攻撃量は非常に低く、隣人モデルと未知個体モデルの間にも攻撃量の違いが確認できた。本結果からハリヨがMSRできる可能性は高いことが明らかとなった。これまでMSRが確認されている種ほど高い社会性を持たないハリヨにもMSRができるということからMSRには「高い社会性」ではなく「個体識別できること」が重要なのではないかと推察する。
ホンソメワケベラを対象とした世界初の自己写真によるマークテスト 畑 泉帆(B4)
鏡像自己認知(MSR)はマークテストにより検証されている。魚類のホンソメワケベラ(ホンソメ)もこのテストに合格し、MSRができる。鏡像自己認知動物の自己鏡像の認識過程の説明は動きの同調性で認識するという「動き同調仮説」と自己の心象で認識しているという「自己心象仮説」の2つがある。MSRできるホンソメに自己写真と他者写真を提示すると、他者写真は攻撃するが、自己写真はしないことから自己心象仮説が支持されている。しかし、自己写真を特別に親しい隣人だと認識している可能性が払拭できない。そこで本研究では、ホンソメが自分の写真を自分と認識することを示すために、自己写真の喉付近にマークをつけて見せる「写真マークテスト」を行った。もし、マークのある自己写真を見て自分の喉(実際にはマークはない)を擦れば、自己写真を自己心象により他者ではなく自己だと認識することを示す。実験の結果、自己写真にマークがあるときのみ8個体中6個体が喉を擦り、マークのない自己写真、マークのある他者写真では擦らなかった。つまりホンソメは「写真マークテスト」に合格した。このことはホンソメが自分の写真だと認識していることをはっきりと示している。この実験により、世界で初めて動物が自己心象により鏡像自己認知ができる、つまり自己意識を持つことが示された。この写真マークテストは、鏡像自己認知で上記2つの仮説の検証に有効と考えられる。
次回の研究会
次回研究会は12月24日(土) 13:00より、以下の内容で開催予定です。詳細及び要旨は12月19日に公開いたします。
プルチャーは“他者の姿”の概念を作るのか?~帰納・演繹による、モデル写真に対する応答の決定~
安藤 芳人(B4)
エビ-ハゼ間の音響コミュニケーションとエビの個体識別能力
長井 勇樹(B4)
連絡先
安藤(研究会渉外担当) a19se001★st.osaka-cu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。