動物社会学研究会のご案内
2023年1月2日
- 研究会(2022年度)
第5回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第5回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2023年1月7日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
ホンソメワケベラにおける自己心象に基づいたメタ認知の検証 小林 大雅(D1)
メタ認知は自分の知識や記憶、自信の有無などを自覚できる能力である。記憶の確かさや判断の確信度に応じて行動を制御できることを示す方法により、イルカやアカゲザルなどはこの能力を持つことが明らかになっている。しかし、これまでその研究対象は一部の哺乳類や鳥類に限られてきた。鏡像自己認知ができたホンソメワケベラが自己心象を基に自分の体長を認識できることを示した私の研究により、ホンソメがメタ認知を持つ可能性が見出された。本発表では先の実験方法を改良し、ホンソメがメタ認知を持つかより的確に検証した実験について紹介する。鏡を見て自分の体長を把握したホンソメはその記憶を基に自分と同種他個体の写真モデル の体長差を見分けられるようになる。しかし、鏡を隠して体長を確認できなくすれば、その記憶は減衰し、曖昧になると考えられる。そ の後、大型個体の写真を提示すると、記憶が曖昧になったことを自覚できていれば、より長時間鏡を隠されたときほど、鏡の前とモデルの前を往復するなどの体長を確認していると考えられる行動が増加すると予想される。一方、脅威の度合いが低いと考えられる小さなモデルを提示した場合はそのような傾向が見られなければ、単に長時間鏡を隠したことではなく、メタ認知能力がこの行動変化 をもたらしたことを示せる。また、本研究では実験個体自身の身体心象の記憶の確かさを自覚できることを示すが、これはヒト以外の動物で初となる自己心象に基づいたメタ認知の検証の試みとなる。本手法でメタ認知が検証できれば、最高次の自己意識とされる内省的自己意識を持つことも示唆することができ、自己意識の進化を解明する上で重要な成果をもたらすことが期待される。
魚類の異人種効果 ー顔に地域変異のあるNeolamprologus pulcherは別地域の顔を識別できない- 西田 光輝(M1)
多くの動物において個体識別は社会関係の重要な側面を担っている。個体識別は情報を送る側と受け取る側の両方が存在し、その相互作用によって成立する。情報を送る側は他個体と混同しない個体特有の情報(見た目、声、匂いなど)を持つ必要がある。一方、受け取る側はそれら固有の情報を識別して適切に振る舞うことが要求され、相互作用する個体が多く多様な情報を識別しなければならない種ほど、識別に関係する能力(認知、記憶)が向上することが知られている。種内においても、その生物種をとりまく社会環境の違いによっては個体間・集団間で識別能力が変化する事例も存在する。この代表的な例が「異人種効果」である。異人種効果とは、自人種の顔と比べて他人種の顔が見分けづらい現象のことである。ヒトにおける異人種効果は生得的というよりむしろ幼少期の経験(日常的に接する人種)によるもので、顔に対する広範な識別能力が経験によって狭窄化し、特定人種に対する識別能力に特化するために生じると考えられている。そのため、異人種効果は顔認知能力の発達過程を知るうえで重要な証拠となるが、ヒトと一部の霊長類以外の動物での異人種効果の研究例はない。そこで本研究は、顔の模様の違いに基づいた個体識別を行い、顔の模様に地域変異を持つタンガニイカ湖産カワスズメ科魚類のNeolamprologus pulcherに着目し、魚類における異人種効果を検証することにした。第一段階として、N. pulcherに同地域・別地域の模様を持つ既知・未知個体の顔写真をそれぞれ提示し、個体識別が地域による模様の違いの影響を受けるか検証した。
次回の研究会
次回研究会は1月14日(土) 13:00より、以下の内容で開催予定です。詳細及び要旨は1月9日に公開いたします。
魚類は仮説検証するのか?ホンソメワケベラの鏡像自己認知から
大田 遼(M1)
アユは相手の顔を見て個体識別している? ~モデル提示による検証~
林 耕太(M1)
連絡先
安藤(研究会渉外担当) a19se001★st.osaka-cu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。