動物社会学研究会のご案内
2023年1月23日
- 研究会(2022年度)
第8回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第8回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2023年1月28日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
個性的な模様はなんのためにある?N. pulcher における顔模様の発達とヘルパーへの移行時期 川坂 健人(特任)
なわばりや群れ、順位といった社会関係をもつ動物では、別人と混同されることで仲間から理不尽な攻撃を受けたり、自身に与えられるはずの利益が他者に渡ったりするコストが存在する。そのため、他個体を見分けるための認知能力に加えて、他個体と明確に異なる個体固有のシグナル(個体性)が進化すると考えられている。実際、我々ヒトは顔に特異的な認知システムを持つだけでなく、顔貌と関係するDNA領域には身体のそれよりも高い遺伝的変異がみられる。一方、動物においても他個体を識別する認知システムについては幅広い分類群で検証されているが、他個体と異なる姿形(個体性)の利益については複女王制のアシナガバチなど一部の動物に留まる。そこで本研究では、顔に基づいて他個体を識別するカワスズメ科魚類Neolamprologus pulcherを野外にて観察し、本種の稚魚にいつ明瞭な個体固有の顔模様が現れるか、また、それはなわばり内の他個体と優劣関係を築き、ヘルパーとして防衛や巣の維持といった仕事をはじめる時期と重複するかを検証した。本発表ではこの結果をもとにN. plucherのヘルパーが個体固有の顔模様をもつ意義について議論するとともに、今後の研究計画についても紹介したい。
イトヨオスの闘争行動は、赤い婚姻色の鍵刺激への反応として説明できるのか? 舩野 奈々(M1)
イトヨの雄の攻撃行動は、腹部の赤い婚姻色が鍵刺激となり反射的に起こるとするティンバーゲンの研究は、生得的解発機構の例として知られている。しかし、我々が明らかにしたイトヨが同種他個体を識別し、相手や状況に応じて攻撃を変える事例は刺激反射系だけでは説明できない。本研究ではイトヨの行動を刺激反射とする先行研究の再検証を試みた。まずイトヨが刺激反射に見える攻撃行動をしたのは、興奮状態の雄は縄張りに侵入する何に対しても過敏に反応するのではないかと予測した。これを受け、水槽の雄に別の雄個体を提示し激しいなわばり防衛行動を起こさせ興奮状態にさせた場合とさせていない場合で、先行研究と同様の模型モデル(下側を赤く塗った赤色モデルと白い魚モデル)を提示し、それらへの攻撃行動を分析した。実験結果は、赤色モデルは魚モデルよりも攻撃が多い傾向、興奮度が高いと攻撃が多い傾向があったが、個体変異が大きかった。また提示したモデルの順番が影響していることも考えられた。この順番の影響は1日あたりの提示数が多かったことでモデルに慣れた可能性があり、この可能性を少なくする実験サイクルで再検証する事は今後の重要な課題の1つである。しかし単なる「慣れ」ではなく、物事が何であるかを考え認識した可能性があり、刺激反射とは異なる行動基盤に基づくとも考えられる。今後の再検証実験では、魚の行動を詳細に分析し、魚がモデルをどう認識しているのかを探りたい。
次回の研究会
次回研究会は2月4日(土) 13:00より、以下の内容で開催予定です。詳細及び要旨は1月30日に公開いたします。
一夫一妻の種であるクマノミは古典的一妻多夫にもなるのか?
小林 優也(D1)
クマノミ類の共存と競争に影響を与える色彩パターン
林 希奈(ゲスト:OIST)
連絡先
安藤(研究会渉外担当) a19se001★st.osaka-cu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。