動物社会学研究会のご案内
2023年12月4日
第2回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第2回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2023年12月9日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
ホンソメワケベラの鏡像自己認知から探る魚類における仮説検証の可能性 大田 遼(M2)
鏡像自己認知とは、鏡に映った自分の像を自分であると認識することである。ホンソメワケベラもこの能力をもつ。鏡像自己認知ができる動物は、初めて鏡を見た後に不自然な行動を鏡の前で繰り返すことが知られている。動物は、わざと不自然な動きを繰り返し(=随伴性の確認行動)、鏡像が自分とまったく同じ動きをするなら鏡像は自分、違う動きをすれば自分ではないと判断しているのだと考えられている。これは、「鏡像は自分である」との仮説を立ててそれを検証しているとみなすことができる。ホンソメワケベラの随伴性の確認行動は、鏡に沿ってダッシュする、鏡の前で体をくねらせて泳ぐなど、ある程度の大きさの鏡を必要とする。そのため、もし随伴性の確認行動が仮説検証であれば、小さい鏡では随伴性の確認(=検証)を十分に行えず、鏡像が自分であるとの結論にたどり着けないと予測される。そこで本研究では、本種に小さい鏡を提示した後に自己写真を提示した。なお本種は鏡像自己認知ができた後には自己写真に攻撃しなくなることが分かっている。実験の結果、小さい鏡に対しては攻撃のみが、あるいは攻撃の後に随伴性の確認行動が鏡を除去する直前まで見られた。そしてその後の自己写真提示では攻撃が見られた。この結果は、本種が随伴性の確認行動により仮説検証をしていることを示唆している。動物の仮説検証に関する実証例はこれまでない。本発表では、魚類における仮説検証の可能性と意義について議論する。
トゲウオ雄の攻撃行動は生得的開発機構では説明できない 舩野 奈々(M2)
イトヨ雄の攻撃行動は、腹部の赤い婚姻色が鍵刺激となり反射的に引き起こされるとみなされている。しかし、顔を入れ替えた写真モデルへの行動実験は、攻撃行動は社会的文脈を把握した上での攻撃であり、赤い婚姻色は関係ないことがわかってきた。さらに、最近イトヨが真の個体識別や鏡像自己認知ができることも報告された。つまり、イトヨの攻撃行動を単純な反射の連鎖とする生得的解発機構は見直す必要が出てきた。昨年度の実験で、赤腹モデルをつつく行動が攻撃ではなくむしろ摂餌行動に似ていることに気づいた。実験個体にはアカムシを日常的に与えており、彼らが赤腹モデルの赤を餌と認識した可能性が考えられた。そこで本実験では、個別飼育している縄張り雄に赤色の餌(アカムシ)と赤色でない餌(ブラインシュリンプ)のどちらかを長期間給餌した。さらに満腹状態と空腹状態で、赤腹モデル、白色モデルと未知雄写真モデルへの行動を比較した。提示順はランダムである。いずれの場合も写真モデルには攻撃や威嚇行動をとり、またモデルをつつく行動の頻度はアカムシ給餌の個体が空腹状態において赤色モデルに対し最も高いと予測した。結果は予想通りの傾向が見られた。この結果はイトヨがモデルの赤腹を餌とみなし噛み付いた行動であり、それが攻撃行動とみなされ赤色が攻撃を引き起こす鍵刺激との説明がなされた可能性が高いと考えられる。70年前にティンバーゲンが実験でイトヨにアカムシを餌として与えていたかどうかを現在確認中である。
過去の研究会の発表者と発表要旨
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連絡先
安藤(研究会渉外担当) se23697g★st.omu.ac.jp
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