動物社会学研究会のご案内
2024年1月26日
第9回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第9回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2024年1月27日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
クマノミの非繁殖雄がグループに滞在する意義はあるのか? 小林 優也(D2)
動物の中には集団を形成し、他個体に対して協力的に振る舞う種がいる。こうした一見すると自身の生存や繁殖に関係ない行動がなぜ進化し、どのように社会が形成されるのかは行動生態学者の大きな関心を集めてきた。中でも、海産魚類は非血縁個体が形成する社会の研究モデルとして注目されており、一部の個体が繁殖を独占するような強い社会的制約や、集団の外では繁殖が不可能である強い生態的制約が主な出現要因であると考えられている。しかし、これらの制約の強度を決める繁殖資源や生息地の質などの要因による社会構造の変動パターンを検証した例は少ない。近年、発表者の調査により、クマノミAmphiprion clarkiiの一部の雌は豊富なイソギンチャクを保有し、そこへ二番目の雄が滞在していることがわかった。しかし、第二雄は繁殖には参加せず、第二雄の存在がグループへ与える効果も不であった。そこで、目視観察とビデオ撮影からグループの各個体の行動を定量化し、第二雄がグループに滞在する意義を検討した。また、十分なサンプル数が得られなかったが、繁殖雄を除去し、第二雄が繁殖の地位を継承できるかを検証した実験の結果も本研究会にて報告する。
哲学で再考する生物学 十川 俊平(研究員)
現代の生物学においてヒト以外の動物(以下、動物)の行動は自己意識を伴う理性的なもの(MSA)ではなく、生得的解発機構と学習によって説明されてきた。そして、この考え方を前提にティンバーゲンの4つのなぜに従って様々な解釈が考えられてきた。しかし、2023年にホンソメワケベラで写真自己認知が示されたことによって、動物にもヒトと同様のレベルの自己意識があることがわかってきた。では、そもそもなぜ過去の研究者たちは動物にはMSAが存在せず、その行動の説明に生得的解発機構や学習を想定したのだろうか?それを紐解いていくと、その始まりはおそらくギリシャ哲学にあることがわかってきた。本研究会では、ソクラテスの解釈をめぐる対立から始まった認識論の誤り、近代哲学からヒトの行動研究である文化人類学がたどってきた流れを簡単に振り返り、そこで議論された問題が生物学でも同様にみられることを紹介する。かつてアインシュタインは”Science(理学) without religion(哲学) is lame, religion without science is blind.”と言ったそうだが、現代の生物学における前提への妄信は、生物学が哲学ではなく宗教そのものと化していることを意味し、私はそれに警鐘を鳴らしたい。そして、ティンバーゲンの4つのなぜという問いを再考し、動物に自己意識を認めることで何が変わるのか、特に進化と結果と文化というものの新たな枠組みについて議論したい。
過去の研究会の発表者と発表要旨
過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。