動物社会学研究会のご案内

2024年2月13日

第13回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第13回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2024年2月17日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

共同繁殖魚Neolamprologus savoryiは協力関係の維持に罰を使うか? ~念願のタンガニイカ湖に行ってきた~ 日髙 諒(D1) 

 ヒトでは協力社会を維持するために、親のしつけから刑罰に至るまで幅広く罰が見られる。協力的な社会を持つヒト以外の動物でも、罰によって協力関係を維持している可能性があるが、集団内で罰として機能している行動を明らかにした研究はほとんどない。協同繁殖種は協力的な社会を持つ動物の代表例であり、親以外の個体(ヘルパー)が親の子育てを手伝う。この協力行動の説明の一つにPay-to-stay仮説がある。この仮説では、ヘルパーは親のなわばりへの滞在を許容してもらうために手伝うと考えられており、親はヘルパーがサボる(手伝わない)場合、罰を与えると予測される。これまで私は、タンガニイカ湖に生息する協同繁殖魚サボリ(Neolamprologus savoryi)を対象に、血縁ヘルパー(繁殖個体の子)の手伝いを制限する水槽実験を行い、サボリの親は、サボるヘルパーに罰を与え、手伝い行動を引き出すこと、また、ヘルパーは親からの罰の回避のために、攻撃に先立ち手伝いを増やすことを明らかにした。しかし、水槽内の統制された環境とは異なり、野外ではヘルパーの数や性別、ヘルパーと親の血縁度、また、繁殖雄が囲う雌の数が異なる。そのため、水槽実験と同様の実験を野外で再現することで、水槽実験では得られなかったこれら複数の要因が協力社会を維持するための罰にどのような影響を与えるか評価することが可能である。そこで、今年度はザンビア・タンガニイカ湖での野外調査を行った。水槽実験と同様の実験を野外で再現するだけでなく、自然条件下でのサボリの観察、親の隔離実験も行った。本研究会では、野外調査での結果をもとに、サボリが協力行動の維持に罰を使っているかどうかを議論する。また、私にとってタンガニイカ湖での調査は念願であり、潜水調査中は多くの発見があった。その発見に加え、文化の異なる刺激的なザンビアでの生活も紹介したいと思う。

ホンソメのMSR研究からのブレイクスルー:Ⅲ 生物進化の捉え方再考 幸田 正典(特任)

 19世紀後半、ダーウィンやロマネスは脊椎動物(動物)の情動や様々な認知能力を<ヒトとの関連性を念頭に>報告した。しかし20世紀に入ると、動物の豊かな情動や認知を一切認めない立場が横行した。この流れが動物行動は定型的で遺伝子支配を受ける形態形質と同じ表現型との混同を生み出し、行動を自然淘汰の対象とするネオダーウィニズムの常識が続いている。しかし、最近の当研究室の魚類を対象とした一連の研究成果<自己意識/洞察/ひらめき/概念形成/思考/メタ認知/共感>(エピソード記憶が背景)から、従来と真逆に、魚類にもヒト並の情動と理性に基づく高い認知の存在が明らかになった。その脳神経基盤はおそらく脊椎動物に共通で、魚類の段階で獲得されたと思われる。さらに動物の基本動作である運動や摂食も個別の遺伝的決定でも学習でもなく、経験(=手続き記憶)に基づく行動であり、認知能力と合わせ動物は多様な状況に臨機応変に対処できている。この手続き記憶も魚類の進化段階で獲得されたと思われる。

運動の手続き記憶と認知のエピソード記憶とを考え併せてネオダーウィニズムを見直すと、異種間での動物行動の差異の多くが、形態形質のように進化したのか甚だ怪しいことに気づく。この視点は従来の進化論と進化の捉え方を刷新するかもしれない。個体の主体性を認めた自由で柔軟な動物行動の視点から再考すると、例えばダーウィンが「種の起源」であげた難題(中間的形態種の不在)も解決できそうである。当日は、この難題も捉え方を変えて検討したい。

過去の研究会の発表者と発表要旨

過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。

連絡先

安藤(研究会渉外担当) se23697g★st.omu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。