動物社会学研究会のご案内
2024年11月25日
- 研究会(2024年度)
第1回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第1回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2024年11月30日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟1階会議室(E108)
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
本当に「魚も人と変わらないくらい」賢いのか?:学習を利用したホンソメワケベラのメタ認知検証実験から考える「魚の限界」と真の認知能力を見極める重要性 小林大雅
近年、我々の研究室が取り組んでいるホンソメワケベラの鏡像自己認知を中心に、魚類も自己意識を含む高度な認知能力をもつことが次々に解明され、「魚もヒトと変わらない」認知能力を備える可能性が現実味を帯びてきた。一方で、魚とヒトの認知能力が全く同等である
とは考えにくい。今春、オーストラリアのリザード島で行った実験で、私は「魚の限界」を感じる経験を得た。私はホンソメワケベラを対象に自分の知識や記憶、自信の有無などを自覚する能力であるメタ認知を研究しており、鏡を使った実験でメタ認知を持つ可能性を示唆する結果を得た。島では自分の判断の確信度に応じて選択を変えられるか検証するuncertainty monitoring と自身の知識や記憶に応じて必要な情報を求められるか検証するinformation seeking の 2 手法を用いて異なる観点からメタ認知を検証することを試みた。しかし、uncertainty monitoring ではテストの難易度にかかわらず魚が本来好まないはずの選択肢ばかり選ぶようになってしまい、information seeking では実験の前提である物体が隠されたとしてもその場に存在し続ける永続性を理解できない可能性があることがわかった。学習をもとに動物の認知能力を解明する研究は数多く行われているが、どれも人が定めた法則を動物が繰り返し訓練することにより習得することを前提としている。しかし、動物が人の想定通りに行動を学習するとは限らない。また、ホンソメワケベラが鏡像自己認知よりはるかに簡単だと思われる物の永続性の理解に劣ることは意外だったが、その原因には自ら餌を探すことの少ないかれらの生態が影響していると考えられる。動物の認知能力を解明するためにかれらの生態を考慮する重要性は近年議論が盛んではあるが、私の実体験とともに共有し、議論したい。
実は、隠れたフロンティア?:モデル生物メダカの行動生態学研究を進める中で見えてきた景色 近藤湧生
メダカ(Oryzias latipes)は、さまざまな生物学の分野においてモデル生物として広く利用されてきた。しかしながら、メダカの生態に関する知見は限られている。例えば、産卵行動については日の出前後の1時間以内に行われると従来考えられてきたが、暗条件下での直接観察による実証的研究は行われていない。
本研究では、自然光および水温条件下で飼育した個体を用いて、24時間の連続観察を実施し、メダカの産卵開始時刻とそれに伴う求愛行動パターンを調査した。具体的には、野外に設置した飼育水槽で飼育したメダカを用い、オス1個体とメス1個体を同一水槽に入れ、18時から赤外線カメラによる24時間の連続撮影を実施した。動画解析により、産卵行動の開始時刻の特定および24時間にわたる求愛行動の活動量変化を定量した。
その結果、メダカの求愛および産卵行動が、従来考えられていたよりも早い深夜から活発に開始されることが明らかとなってきた。この発見は、これまで見過ごされてきたメダカの繁殖生態に関する新たな知見を提供するものである。本研究を通じて、モデル生物の生態学的理解が生物学の包括的な理解において重要な課題であることを再確認したい。本発表では、メダカの生態研究という隠れたフロンティアと今後の展望について、巨人の肩に乗りつつ建設的で前向きな議論を展開したい。
※本研究プロジェクトは発表者主導で進めており、現在、共同研究者およびアルバイトを募集している。今回の発表内容は、発表者が単独で7月に実験、8−9月に動画解析、10月に論文の執筆を完了させた。そして、年内には論文投稿をする。しかし、1人ですべての作業を行うには限界があるため、今後は共同研究者との協力体制を構築し、さらなる研究成果の創出を目指している。ご興味をお持ちの方は、指導教員と相談の上ご連絡いただければ幸いである。youkikondou[a]gmail.com [a]→@
過去の研究会の発表者と発表要旨
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連絡先
森(研究会渉外担当) a20se029★st.osaka-cu.ac.jp
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