動物社会学研究会のご案内

2024年12月10日

  • 研究会(2024年度)

第3回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第3回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2024年12月14日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟第10講義室
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

エビ-ハゼ相利共生の繋がりの強さは餌量に応じて変化するのか〜異なる環境に生息する同種エビ-ハゼペアの行動比較〜 長井勇樹

テッポウエビ(以下エビ)とハゼの共生関係は、海産動物の相利共生の例として有名である。これまで、ハゼはエビの「捕食者を警戒」し、エビはハゼに「巣穴を提供」するというのが通説だった。しかし、近年、当研究室によって、底生動物食のハゼは自身の糞を餌としてエビに与え、エビは砂底を掘り返すことで底生動物をハゼに与えることが明らかになった。このようにエビとハゼの共生関係には餌が重要であることがわかってきているが、エビとハゼの繋がりの強さは種間で大きく異なる。例えば、共生相手なしには生きられない強固な「義務的共生」や、必ずしも共生相手がいなくても生きられる希薄な「日和見的共生」がある。エビとハゼの繋がりの強さに餌が強く関係しているのであれば、義務的共生と日和見的共生の違いは環境の餌量で説明できるかもしれない(=餌量仮説)。そこで、餌が豊富な環境と乏しい環境に生息する、同種のエビ-ハゼペアを対象に行動を比較し、餌量仮説を検証した。モンツキテッポウエビとヒメダテハゼ、ホリモンツキテッポウエビとギンガハゼのペアを対象に、沖縄県西表島に設定した6つの調査地において、餌の定量と行動観察を実施した。本研究会では、これらの結果を報告し、環境中の餌量がエビとハゼの繋がりの強さに影響を与えるのかについて議論する。さらに、これまでの野外調査から見えてきた、ハゼによるエビへの新たな給餌行動についても紹介する。

 ホヤに卵寄託するアナハゼ類の宿主選択と産卵管長の種間・種内変異:個体群間での比較 中村俊介

交尾器や精子形態などの繁殖形質は多様性に富む。これらの多くは性選択によって適応進化したと考えられるが、産卵管のように種間相互作用によって進化する場合もある。海産カジカ科魚類の一部は産卵管を持ち、ホヤやカイメンなどに卵寄託する。これまでにアナハゼ類8種で宿主特異性と産卵管長の変異が認められているほか、同種内でも産卵管長に地域変異が見つかっている。アナハゼ類は北海道から鹿児島まで広く生息するが、宿主となるホヤの分布は各地で異なり、利用する宿主種やそのサイズに応じて産卵管長に地域差がある可能性がある。そこで本研究では、積丹、三陸、佐渡、伊豆、大阪、福岡の6地点でアナハゼ類の産卵管長と宿主のホヤ種およびその大きさを調査した。その結果、ホヤの種類は北日本を中心に生息する北方系の種と西日本を中心に生息する南方系の種類に大きく分かれたが、ミハエルボヤは全ての調査地点で確認された。アナハゼ類の6種の大部分はミハエルボヤと温帯種のリッテルボヤを宿主として用いており、キリンアナハゼはマボヤ、サラサカジカはヨーロッパザラボヤへの産卵が数例確認されたにとどまった。また、利用するホヤの種類に大きな地域変異は見られなかった。アナハゼで産卵管長の地域間比較を行った結果、伊豆のアナハゼは佐渡、福岡、大阪よりも産卵管が長く、使用するホヤも大きかった。また、アサヒアナハゼについては佐渡、三陸、積丹で比較したところ産卵管長に差異は見られなかった。以上より、アナハゼ類は遺伝的差異のある太平洋個体群と日本海個体群で産卵管長の種内変異が認められるものの、全国的に利用可能なホヤ種を主な宿主としていることが明らかになった。

過去の研究会の発表者と発表要旨

過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。

連絡先

森(研究会渉外担当) a20se029★st.osaka-cu.ac.jp
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