動物社会学研究会のご案内
2025年1月7日
- 研究会(2024年度)
第6回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ
第6回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。
外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。
開催概要
日時: 2025年1月11日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)
場所: 大阪公立大学 理学部E棟第10講義室
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)
発表内容
猛毒植物シキミ上の節足動物群集の時空間動態と毒の伝播 坂井俊介
植物と動物の間に見られる相互作用は非常に多様であり、植物が産生する二次代謝産物はその多様性をさらに増す要因となる。一部の植物は、捕食者からの防御手段として毒を生産する一方、特定の植食者はこれに耐性を示し、その毒を体内に蓄積することで捕食者に対する防御として利用する。これまでの研究では、特定の有毒植物と限られた植食者との相互作用が詳しく調べられてきたが、1種の有毒植物上に見られる節足動物群集全体における毒の伝播については解明されていない。
本研究では、マツブサ科シキミ属の猛毒植物シキミ(Illicium anisatum)を対象に、植物上の節足動物群集の時空間的動態とその中での毒の伝播過程を明らかにすることを目的とする。シキミは植物体全体に毒性成分アニサチンを含有し、この毒は特に果実や種子に多く分布する。
大阪府箕面市の勝尾寺園地において、シキミの株のシュート上の節足動物を通年採集し、節足動物群集の時空間的動態について網羅的な観察を行った。またシキミの各部位における毒の濃度が季節によってどのように変化するかを調査するためのサンプルを採取した。さらに広島県廿日市市宮島のサイトも加えて、花上の節足動物の調査および種子のレアリング試験を行った。その結果、シキミ上には多様な植食者が見られ、さらに捕食者や寄生者も含めた多様な節足動物が訪れることが確認された。またシキミの花や種子を食べる鱗翅目幼虫が複数種確認された。今後、これらの節足動物種および植物部位のアニサチンの定量化データと合わせることで、これらの動物が毒に対してどのように対応し、利用しているかについて明らかにする。
大阪北部の都市化勾配におけるエノキの鳥類散布プロセスの比較 馬場新千花
現在、世界的に進行している都市化は、動物群集の多様性や組成を変化させ、種間相互作用を変化させると考えられる。動物による種子散布は、植物の生存と拡散において不可欠な相利的相互作用であり、重要な生態系サービスのひとつである。そのため、都市化による種子散布の変化は、植物だけでなく生態系全体に負の影響を及ぼす可能性がある。しかし種子散布者の多様性の変化が種子の散布率に比例しているとは限らず、都市化による生物多様性の減少が起きた場合も、都市の散布者群集が個体数や採餌強度を維持している場合、散布率に大きな影響がない可能性もある。そのため都市化勾配に沿った種子散布パターンの変化を理解することは、都市環境における生態系サービスの現状を把握する際に重要である。しかし、都市化による動物の種多様性の変化と植物との相互作用の変化の両方に焦点を当てた研究はまだ少ない。
そこで本研究では、大阪府北部の市街地から山地にかけて鳥類群集のあり方および鳥類と鳥散布樹木エノキとの相互作用を調査し、都市化勾配に沿った両者の変化を分析した。その結果、種子散布鳥類の種多様性は広いスケールでの緑被量と正の相関がみられた。一方で、エノキ訪問種の種多様性の違いは種子散布量には影響を及ぼさないことが明らかとなった。このことから、都市環境における種子散布プロセスの維持においては、種子散布鳥類の種多様性よりも散布者群集の個体数が重要であることがわかった。
過去の研究会の発表者と発表要旨
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連絡先
森(研究会渉外担当) a20se029★st.osaka-cu.ac.jp
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